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“動画配信元年”はまだこれから……HuluとdTVのキーパーソンが語る「VODの未来」

2015-07-11 13:00:04
 テレビ放送の「テキストデータベース化(TVメタデータ化)」に独自のノウハウを築き、調査・配信・分析のソリューションを提供するエム・データが主催するイベント「新世紀テレビ大学」が10日に開催され、パネルディスカッションに登壇したHJホールディングスの船越雅史氏、エイベックスデジタルの村本理恵子氏は、それぞれが展開するVODサービスの特徴を語った。

 船越氏は米の動画配信大手「Hulu」の日本国内向けサービスを展開するHJホールディングス合同会社の職務執行者社長。船越氏はHulu、並びに自身が設立メンバーでもある「日テレオンデマンド」のサービスプロバイダーとして登壇。NTTドコモのdマーケットで提供される定額制動画配信(SVOD)サービスの「dTV」を運営するエイベックス・デジタルの常務取締役 村本氏と、「VODサービスとコンテンツとの幸福な出会い」について語り合った。

 ディスカッションでは両社にとってのライバルであり、今秋に日本上陸が決定しているNetflix(ネットフリックス)についてのコメントも飛び交った。

■VODサービスのユーザー属性の現状は?

 国内ではVOD(ビデオ・オン・デマンド)を、誰がどのように利用しているのか。ユーザーの属性傾向について、dTVの場合は20~40歳代を中心に、10代から80代までユーザーの年齢層の裾野が幅広いことが特徴であるという村本氏。男女の比率はほぼ半々で、テレビからモバイルまでマルチデバイス化も進んでいるという。

 最もコンテンツが視聴されるコアタイムについては、平日は通勤・通学の時間帯と夜間。週末は昼間のアクセスが伸び、コンテンツも長尺の映画やキッズ系が多く見られているそうだ。この傾向について村本氏は、2009年に立ち上げに関わった「BeeTV」の頃から大きく変わっていないと説明を加える。

 一方のHuluは、2011年時に海外ドラマの品揃えを特徴として掲げながらスタートした経緯もあり、属性は海外ドラマのファンが多く、性別は男性にシフトしていると船越氏は語る。ただ、直近の1年間に国内コンテンツの比率が66%ほどに増えてきたことから、属性にも変化が現れ、「アニメも増やしてきたので、今では圧倒的に20代のユーザーが多い」のだという。

 尺の長いコンテンツが多くラインナップしているため、マルチデバイス比率はテレビが最も多く、これにPC、モバイルが続く。「最近はPCの出荷台数が全体的に減少している分、モバイルにシフトしている」という船越氏。ただ、元々テレビ向けに作られたドラマなどのコンテンツについては「テレビで見るのに最適な画角で制作されているので、本当はテレビのサイズが一番しっくり来るはず」と持論を語った。

■動画配信ならではのコンテンツ作りが求められる

 それぞれのサービスプラットフォームではどのようなコンテンツが好まれているのだろうか。村本氏は「強力なコンテンツがプラットフォームの特色を決定付けるもの」と説く。最近の傾向としては海外ドラマの視聴者が伸びており、特に20~30歳代の層に海外ドラマの視聴者が増えているという。「人気のコンテンツをテコに、新しい客層を開拓しながら市場が作れる可能性」を村本氏は感じているとした。

 船越氏も「『ウォーキングデッド』や『24』など海外ドラマの人気はいまだに衰えない」と村本氏の見解に呼応する。直近では、この2作品に代表されるようなメガヒット・タイトルが、インターネットリテラシーの比較的低い「VOD入門層」と呼ぶべきユーザー層も惹き付けるているというのが船越氏の見方だ。

「スマートテレビやスマートフォンをよく知らない層の方々から、視聴方法に関する問い合わせをカスタマーセンターに多くいただくようになった。VODへの関心層は確実に広がりをみせている。ハリウッドのドラマは、次作品を次々に見たくなるような仕掛けを上手に仕込んでいる作品が多いので、徐々に視聴者を広げるきっかけになっているのだろう」(船越氏)

 インターネットをベースにした動画配信サービスが、テレビ放送に対向していくためには「オリジナルコンテンツ」の品揃えが鍵を握るともいわれている。dTVでは映画「進撃の巨人」や「新宿スワン」など大型作品と連動するオリジナルドラマを制作しながら着実にユーザーを伸ばしている。

 今後はイタリアの映画監督ジュゼッペ・トルナトーレ氏のオリジナルドラマも制作を予定するなど、グローバルな試みにも力を入れていく。「今までに無かった、新しいことをやりたい。オリジナルコンテンツをつくることはdTVにとっては最低限の目標であり、そこからどんな面白いものをつくるかがポイントになる。ドラマにこだわるつもりはなく、バラエティやテレビ局との連動も視野に入れている」と村本氏は意気込む。

 また「動画の尺は映画やテレビドラマと同じである必要はなく、より短いものの方が好まれるかもしれない。またインターネット動画に慣れている視聴者を飽きさせないよう、ストーリー展開のテンポやハイライトを散りばめる感覚にも、配信ならではの手法が必要になるだろう」と村本氏は続ける。一方のHuluでもバラエティ番組では動画配信とテレビ放送による連動を図ったり、DVD販売とのパッケージ展開にも力を入れてきた実績がある。

■人間によるキュレーションがVOD躍進のカギ?

 動画配信サービスの場合は特に、ユーザーとコンテンツのスムーズな出会いをどのように提供できるかが成功の分かれ目であると村本氏は語る。dTVでは「ザッピングUI」と呼ばれるユーザーインターフェースを独自に作り上げ、まるでテレビのチャンネルを切り替えるような感覚で、ユーザーが見たい動画コンテンツを簡単に探して見られるような仕組みを整えた。

 さらにdTVでは、ラインナップする全ての動画コンテンツ1件ごとに1,000種類のタグを“人力”で付与。ユーザーの好みにフィットするコンテンツをレコメンドする仕組みも独自に構築した。

 「人間の手によるキュレーションサービスは、これから配信サービスが躍進するためにとても大事なファクター。機械によるシステムだけではユーザーの満足度を向上させることはできないし、特に日本人は“肌感覚”にこだわる方が多い。見たかったコンテンツが自然にレコメンドされ、時々自分でタイトル検索をして楽しむという使い方と、両方が便利にできるサービスをdTVは意識してきた」と村本氏は説明する。

 ディスカッションの後半では、今後の動画配信サービスとテレビ放送の関係性について議論が及んだ。村本氏は「動画配信サービスは、テレビになろうとしているわけではない」ことを強調する。

「なぜなら、それぞれに役割分担が明確に異なっているから。Netflixの日本市場参入をきっかけに、“テレビの役割は終わるのではないか?”という議論も出てきているが、私はテレビ放送は残るだろうと思っているし、動画配信は新しい映像の楽しみ方を切り拓いていく役割を担うと捉えている。現代人の生活には音楽やゲーム、アウトドアレジャーも含めて様々な娯楽が溢れているので、“映像を見る”ためにどれほどの時間を使ってもらえるかということを、テレビと動画配信が一緒に考えていかなければならないと思っている。そのためには動画配信はこれからテレビ放送に迫る面白いヒット作を数多く制作して、成長しなければならない。そのためには映画やテレビ的なコンテンツばかりを揃えることがベストだとは考えていない。動画配信ならではの新しいチャレンジもしていきたい」(村本氏)

■「動画配信元年」はまだこれから。文化として育てていきたい

 かたや船越氏は「とはいえ、家庭の中にテレビの台数が減ってきていることは事実として受け止めることながら、そこから動画配信の展望を考えるべき」という見解を示す。

「一家庭が所有する“2台目のテレビ”の数は、年々減り続けている。子ども部屋にはもうテレビがないといわれているし、一人暮らしの学生にはテレビは必要ないから持っていないという方も多いと聞く。ただ一方で、情報発信のメディアとしてのテレビの強みにも改めて目を向けて欲しい。地上波のテレビドラマの視聴率が1桁台にしか到達していないと批判を受けることがあるが、“6%”という数値はすなわち“800万人”がその番組を見ているということ。これだけ多くの人口に同時接続できるメディアは他にないだろうし、今後テレビの役割が衰えることはないと考えている。テレビコンテンツの届け方やサービスの在り方は、テクノロジーの進化を上手に取り込んでいくことでより良いものにしていくことができるだろう」(船越氏)

 船越氏はさらに、動画配信サービスにとっての正念場はこれからだと強調する。

「業界では“2014年が動画配信元年”といわれたこともあったが、実際には全然そんなことない。私はこれから2015年後半、2016年を元年にできるよう勝負しなければならないと捉えている。なでしこジャパンの宮間選手の言葉を借りるなら、動画配信はまだ文化になっていない。そこへ昇華できるかどうかはこれからの努力にかかっている。Netflixの日本市場進出によってにわかに動画配信の周囲がざわつき始めているが、まだ始まったばかり。Huluだけでなく全ての動画配信事業者の頑張りにかかっている。危機感を持ちながら、動画配信を文化に育てていきたい」(船越氏)
RBB TODAY

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