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自動運転やAIはまだ先? これが現実的なタクシーとITのコラボの事例

2016-07-19 16:30:06


 青森市の文化タクシーとリンクステーション、NTTドコモ東北支社は、7月15日より文化タクシーが保有するワゴン型タクシー(日産NV200)10台に無料Wi-Fiサービスと、通訳を介した3者通話による多言語電話通訳サービスを搭載し提供を開始した。

 大都市圏のタクシーではWi-Fiや通訳サービスの搭載は珍しいものではないが、地方都市のタクシーではまだまだ希少であり、インバウンド対策に取り組むサービスのコラボレーション事例として注目しておきたいところだ。

■NTTドコモのWi-Fiルータを搭載、電話通訳サービスも

 このタクシー車内に搭載される通信関連設備であるが、無料Wi-FiはNTTドコモのWi-Fi STATION HW-02Gの搭載で実現させている。HW-02GはNTTドコモのLTE網に接続し、下り最速262.5Mbpsの高速データ通信が可能である。無料Wi-Fiというと通信速度に期待できないものが多いところだが、文化タクシーの場合はキャリアアグリゲーションに対応した最新のモバイルWi-Fiルーターを搭載することにより、快適な通信環境をタクシー車内に構築している。そもそも大都市圏に比べればモバイルネットワーク自体もトラフィックが少ないため、きわめて高速で快適なデータ通信が利用可能だ。

 東京など、大都市圏におけるタクシーへの無料Wi-Fi搭載は目新しいものではなくなってきたが、地方都市ではまだ希少な存在といえる。今回の文化タクシーにおける無料Wi-Fiサービスの提供も青森県においては初の試みとなる。このモバイルWi-Fiルーターの運用だが、端末はNTTドコモ東北支社が提供し、その通信費はリンクステーションが負担するという形で実現している。

 青森市に本社を置くリンクステーションは、全国のセブンイレブンに配備されているチケット予約・発券システムを提供しているIT企業として知られているが、一方で青森県内において地域情報サイト「ポみっと!」の運営も行っている。今回、文化タクシー車内に配備した無料Wi-Fiサービスの名称は「ポみっと!フリーWi-Fi」と名付けられ、リンクステーションとの協業で実現していることをアピールする。

 また、青森港は海外からの大型客船が頻繁に寄港する港であり、外国人観光客も少なくない。こうしたインバウンド対策として無料Wi-Fiサービスの提供は不可欠なのだが、文化タクシーではこれに併せ24時間利用可能な多言語電話通訳サービスも備えた。10カ国語に対応した電話通訳サービス会社と提携し、タクシーに搭載したタブレット端末を通じて通話接続。運転席と後部座席に設置したマイクとスピーカーを通じて乗客と乗務員、通訳の3者が車内で同時に会話できる環境を整えた。日本語が不自由な外国人観光客でも安心して乗車できるように配慮している。

■地方都市ならではのオンラインとオフラインのリンク

 これらの設備を導入したタクシー車両は、日産が新発想タクシーとして提案するワゴン型NV200。じつはこの車両自体も青森市では珍しい。先行して、あるタクシー会社が車いす対応車両として1台導入した実績はあるが、一般営業用にNV200を導入したのはこの文化タクシーが青森市で初となる。市内を走行するその姿は多くの人たちの目を引いており、しかもその大きな車体には、リンクステーションが地域で提供している地域情報サイト「ポみっと!」のキャラクターがあしらわれている。

 「ポみっと!」は、青森県内のグルメやショッピング、ビューティーといったスポットを多言語で紹介しているサイトである。すでに地域での知名度はあるが、タクシー車体を使った広告効果は大きそうだ。しかも、観光客を飲食店等に送迎する際にも活躍するタクシーだけに相乗効果は大きいと感じた。すなわち、「ポみっと!」のクライアントとなるべき飲食店などの目に触れる機会も増えるであろうし、逆にタクシー乗務員にとっては「ポみっと!」にある情報が乗客への案内に有効に活かせるだろう。

 文化タクシーに設置された無料Wi-Fiに接続した場合、ブラウザを開くと「ポみっと!」のトップページへ誘導されるようになっており、これにより地域情報への導線をしっかりと作っている。目立つタクシー車両の導入やそれを活かした地域情報サイトのプロモーション戦略など、そもそもタクシー会社とIT企業という異業種のコラボレーションが実現できた背景にはどのような事情があったのか。

 じつはこれらの仕掛け人が、両社の代表取締役を務めている大嶋憲通氏。そしてそれを支えたのが文化タクシー女子社員とリンクステーション女子社員が意気投合して生まれた「文化タクシー女子部」だ。一貫してITの世界でオンラインのビジネスを展開してきた大嶋氏が地域でタクシー業界にも進出を果たした。

 ITとタクシーでいったいどのようなシナジーを生み出すのか。大嶋氏は両社をつなぎ、若手女子社員の交流によって理想のタクシーを追求していった。そして、インバウンド対策として地方都市でいち早くタクシー車両の通信環境や多言語電話通訳サービスの整備を実現させ、またその車体を使って地域情報サイトを市民にアピールする宣伝戦略を打ち出した。こうしてタクシーと地域のスポットといったつながっていなかった「オフライン」が「オンライン」で結ばれるようになった。

 IT業界では通信およびAI技術の発展に伴った自動運転技術など、近未来的な話題が脚光を浴びているところだが、もっと現実的なところで異業種がコラボレーションしICTがそれを支えていく。地味ながらも地域の発展に貢献しようと創意工夫をこらすユニークな動きを地方に見出すことができた。
木暮祐一

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