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MVNOの可能性を広げる?IIJ、“縛り”から開放された「フルMVNO」を2017年提供へ

2016-08-30 22:16:12
 インターネットイニシアティブ(IIJ)は30日、MVNO事業の強化に向けた「フルMVNO」の取り組みについて記者説明会を開催した。フルMVNOによるデータ通信サービスの提供時期は、2017年度下期を予定している。

 現在、IIJでは格安SIMサービス「IIJmio」などを展開しているが、NTTドコモの回線を間借りしている関係から、運営面で多くの制約を受けている。そこで同社ではフルMVNOに対応させ、より自由度の高いサービスを実現していきたい考えだ。説明会の冒頭、IIJ 代表取締役会長CEOの鈴木幸一氏が登壇して概要を説明した。

 MNO設備への依存が高い従来のMVNO(ライトMVNO)に対して、フルMVNOではSIMカードを管理するデータベースであるHLR/HSSを自社で運営することになる。これにより独自のSIMカードの調達・発行が可能になり、自由なサービス設計が行えるようになる。NTTドコモ側の承諾が必要だが、IIJでは8月29日にNTTドコモに対して「加入者管理機能の連携」を申し込み、同日中に受理されている。

 例えば市場の成長が期待されているIoTの分野では、組み込み型SIMの提供や課金・開通管理などを自由にコントロールできるようになる。鈴木会長は「新しいMVNOビジネスモデルの創出が期待できる」と期待感を口にした。

 具体的には、(1)海外のMNO/MVNOと連携して海外のローミング時に最適な通信サービスを提供する、(2)組み込み型SIM(eSIM)や、耐振動性、耐候性を備えたSIMカードを提供する、(3)機器の製造ラインでSIMを組み込み、集荷後、必要なときに通信サービスを開通して利用可能にする、といった展開を想定。このほか、MVNEとしてパートナー企業にフルMVNOのプラットフォームを提供することで、パートナー企業がもつ顧客基盤やビジネスモデルに適した独自のMVNOサービスの展開を支援する、といったことも考えている。

 鈴木会長は「フルMVNOにより、大手キャリアさんのスペックではない形でサービスを提供できる。今後、ワイヤレスをベースにしたネットワーク社会がやってくる。そこでIIJが培った経験と技術を、さまざまな形で提供していきたい」と抱負を述べた。来年度の後半から順次、IIJによる新サービスが提供されていく見込みだ。

■フルMVNO提供に至った経緯

 続いてIIJ 取締役CTOの島上純一氏が登壇し、これまでの市場の成り立ちから説明した。移動通信にとって、使いやすい電波の周波数帯は決まっている。このため世界的にも、3~4社の通信事業者が移動通信を運営するケースが多い。日本でもNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社に電波が与えられた。こうしたモバイル市場の成り立ちから、寡占が起こりやすいという問題がある。そこで、電波を持っていなくてもサービスを展開できるMVNOの必要性が生じてくる。

 MVNOに期待されていることについて、島上氏は「モバイル市場全体の成長、拡大に寄与すること」と説明する。MVNOの台頭はMNO、MVNO、ユーザーの3者にメリットがあるとのこと。MNOにとってはリソースを有効に活用してもらえるメリットが、MVNOにとっては設備投資をしなくてもサービスを展開できるメリットが、ユーザーにとっては利用するサービスの選択肢が広がるメリットがあると説明した。

 IIJでは2009年3月にレイヤ2接続によるサービスを日本で初めて開始し、従来なかったような料金体系とサービスを実現させた。これによりSIMロックフリーという新たな市場も創出した。「イノベーションは成功したが、その一方で競争は激化した。レイヤ2接続による競争には限界がきている。MVNOのさらなる発展には、次のブレイクスルーが必要」と島上氏。それこそがフルMVNOの取り組みだという。

■HLR/HSSの開放とは

 これまでMVNOの発展には、HLR/HSSの開放が必要だと言われ続けてきた。HLR/HSSとは、SIMカードを管理するためのデータベース。SIMカードの契約を識別するIMSI(イムジー)、電話番号、通信を暗号化するためのキーなどが含まれている。これにより該当デバイスがサービスを利用できるのか(認証)、どこでサービスを受けているのか(位置登録)、などの情報をやりとりしている。

 「これまでは、NTTドコモのSIMカードをお借りしていた。したがってSIMカードの中に含まれる情報は、我々がコントロールできなかった。今後はSIMカードの中身をコントロールすることが、サービス拡充の肝となる」と島上氏。IoTの時代に要求される機能について、「リプログラマブル」(SIMカードに含まれるプログラムを書き換えられる)、「エンデベット」(これによりSIMカードを基盤に埋め込むことも可能)、「マルチプロファイル」(書き込まれた情報を切り替えることで、柔軟なサービスの提供が可能になる)を挙げている。

 パソコン、乗用車、工作機器など、様々なモノに通信機能が組み込まれるIoTの時代が到来する。これまでなら出荷される国の通信環境にあわせたSIMカードが挿さるよう、機器を個別に開発する必要があった。しかしフルMVNOに対応した後は、機器にチップとしてSIMカードの機能を組み込むことで、IIJ側で必要に応じてアクティベーションをかけるなどして、情報をアップデートできるようになる。

 このほか、1枚のSIMで国内外の通信サービスを低料金で提供できる「マルチカントリーMVNO」の提供も想定。またアプリとSIMを連携させることでNFC、フィンテック、マイナンバー連携といった分野に参入する(あるいはパートナー企業と協業する)という展開も考えている。

 島上氏は「ヒトと機械がネットワークに接続する世界が広がっていく。移動通信が果たす役割が大きくなるなか、MVNOを提供するIIJでも世界を便利にするサービスを主体となって推進していきたい」と意欲的に話していた。

■MNOの縛り、このままでは戦えない

 記者説明会の最後に、質疑応答の時間がもうけられた。

--- これまで、他社ではフルMVNOに踏み切れなかった。

鈴木会長「我々としても急に実現できたわけではなく、レイヤ2接続できたときから構想していた。つまり検討を始めたのはかなり早い時期で、そこから長い議論を経ている。旧来のキャリアさんにできない自由度の高い、新しいネットワークインフラをつくり、アプリケーションやサービスを構築していく。費用面では大きな額が必要になった。正確な数字は申し上げられないが、十億円単位。それだけビジネスチャンスがあるということで、見合ったものを回収できると考えている」

--- 具体的に、IIJはフルMVNOで何をしていくのか。

鈴木会長「ひとつはIoTの世界において、新しいワイヤレスのサービスを展開していく。デバイスに組み込むことで、多様なサービスを展開できる。いま具体的に発表できるものはないが、過去数年に渡って考えてきたことがある。現行のキャリアさんではできないサービスをつくる自信がある。それが実現すれば、違うディメンションの競争になる」

島上氏「これから伸びていくのは無線の領域、モノがインターネットにつながる領域。いまのMNOさんにしばられているサービス内容のままでは戦えない。それを戦える環境にまで持っていきたい。土台を作って、来るべきIoTの時代に一部レイヤとして参画する。そして市場を引っぱっていきたい」

--- どうしてこれだけ時間がかかった?

島上氏「我々のやりたいことを具体化しながら、それに合ったドコモさん側の設備の切り分けなど、そのあたりをずっと協議させていただいた。我々側でコアのネットワークの知識が足りない部分もあったかも知れない。また、こちらの意図をドコモさんに正しく組み入れていただけなかったこともあったかも知れない。徐々にそのあたりを改善させながら協議を進めていった。基本的には民民協議で、ドコモさんに真摯に対応していただき、ここまでこれた」
近藤謙太郎

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