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新10.5インチ「iPad Pro」は買いなのか?9.7インチ機ユーザーが品定め

2017-06-16 21:54:20
 アップルが「iPad Pro」の最新モデルを発表。シリーズとして最初に発売された12.9インチのリニューアルと、いままでなかった10.5インチのiPad Proが発売された。今回の新製品発売とともに、9.7インチのiPad Proは生産完了になる。現在9.7インチのiPad Proを使っているユーザーでもある筆者が、10.5インチの実機をハンドリングしながら最新のiPadが買いなのか、真剣に吟味した。

■まずは「10.5インチ」のサイズ感を確かめる

 まずは10.5インチと9.7インチのiPad Proを並べたり、重ねてみたりしながらサイズを比較した写真を見てほしい。最新のiPad Proは、最近のスマホがよく採用している峡額縁デザインの“ナローベゼル”設計だ。だから画面サイズは大きくなっても、そのまま本体の大きさ反映されないところがポイントになる。フットプリントではわずか7%の拡大にとどめたという。厚みを比べてみても目に見える変化はない。9.7インチと10.5インチを比較した質量も、Wi-Fiモデルが437g対469g、Wi-Fi+セルラーモデルで444g対477gと違いはわずか。手に持ってもその差はすぐに気がつかないだろう。

 iPhone 7シリーズにならってマットブラックが追加されるのではと個人的に期待していたが、カラバリは従来通りの4色となったのが残念だ。背面のiSightカメラがiPhone 7シリーズに並ぶスペックになった。カメラ部分の“出っ張り”があるのは9.7インチのiPad Proと同じだが、出っ張りを囲うフレームが少し太くなっている。iSightカメラの画素数は1,200万と変わらず。フロント側のFaceTimeカメラが500万画素から700万画素に強化された。静止画撮影のサンプルは本稿の写真リストに掲載している。

■ディスプレイの描画応答速度が向上すると何が快適になるのか

 アップルは今回、下のサイズのiPad Proを“サイズアップ”した理由について、もっと色んなことができるタブレットにしたかったからだと発表会などで説明している。色んなことができるようになった革新の大半は、今回は「ディスプレイ」に集約されている。

 10.5インチのiPad Proのディスプレイは、サイズが大きくなっただけでなく「明るさ」が9.7インチよりも20%向上して600ニットになった。いまスマホでも流行している高画質技術である「HDR」にもiPadとして初めて対応。HDRの映像コンテンツを表示すると、輝度やコントラスト感、色合いもより自然なバランスの映像が楽しめる。ひかりTVやdTVではモバイル端末向けにHDR対応のコンテンツ配信をスタートするので、これらの高画質な動画がいち早く楽しめるタブレットであるところは、新しいiPad Proシリーズの強みとも言える。

 最新モデルのディスプレイには「ProMotion」と呼ばれる、映像を見やすくするだけでなく、iPad Proのタッチ操作をより快適にしてくれる機能が搭載された。画面を描画する際のリフレッシュレート(1秒間に画面を描き直す頻度)を、従来モデルの60Hzから、2倍となる120Hzに高めた。これにより動画が滑らかに見えるだけでなく、画面にタッチしたときの操作の反応がグンと高まっている。

 その差が最もわかりやすく現れるのがApple Pencilで線や図形などを描画したときの反応だ。「Sketches」アプリで曲線を書いてみると、ペン先の動きにすぐさま反応して画面に黒い線がデータ化される。Mapアプリの3D地図をスクロールしたり、拡大・回転してみても、指先での操作に対してストレスなく表示がピタリと追従してくる。これは気持ちがいい。

■Apple PencilとiPad Pro。「Sketches」アプリでの描画速度を比較

【iPad Pro 10.5インチ】

【iPad Pro 9.7インチ】

■iPad Proで「マップ】アプリの3D表示を比較

【iPad Pro 10.5インチ】

【iPad Pro 9.7インチ】

 ディスプレイを高速で描画し直しているということは、駆動によりバッテリーを食うんじゃないの?と思うかもしれない。新しいiPad Proは画面に静止状態のコンテンツが表示されていて、タッチ操作がなかった場合は自動的にリフレッシュレートを24Hzに下げる仕組みも採り入れた。つまり無駄にエネルギーを消費しないように設計されているのだ。なおVODサービスの動画コンテンツについては、アプリの方で動画表示のリフレッシュレートが固定されているので、画面にタッチせずにしばらく視聴していても画質が低下する心配はない。

 iBooksアプリで電子書籍コンテンツを表示してみた。9.7インチのiPad Proにも搭載されていた、画面のホワイトバランスを周辺光に合わせながら自動で最適化してくれる「True Tone」により、目の疲れや違和感はほとんど感じない。低反射率1.8%のガラスパネルを搭載しているので、屋外でもコンテンツが見やすいのがいい。



■最低ストレージ容量は64GBも必要か?

 新しいiPad Proで強化されたディスプレイの、鋭い反応を支えているのは最新のSoC「A10X Fusion」だ。9.7インチのiPad Proに搭載されていた「A9X」に比べて、CPUで30%、GPUは40%も処理性能が上がっている。ベンチマーク測定アプリで確認してみると、CPUの処理性能が上がっているだけでなく、メインメモリーのサイズが9.7インチの2GBから、10.5インチでは4GBに増強されていることもわかった。アプリのマルチタスク処理や手の込んだ3Dグラフィクスを駆使したゲームなどサクサクとこなしてくれそうだ。

 内蔵ストレージは9.7インチにはあった最低容量の32GBがなくなった。10.5インチでは「最小64GB~」となった。筆者は9.7インチのiPad Proを買ったときに、iPadでほとんど写真は撮らないし、仕事のファイルなどはぜんぶクラウドストレージに保存してしまうから、ストレージは最小サイズでいいだろうと高をくくってしまったのだが、iPadでNetflixやAmazonプライム・ビデオをみるようになり、海外旅行の際にオフライン再生できるようにコンテンツをダウンロードし始めたら32GBでは物足りなく感じるようになってしまった。

 ストレージの最低容量が64GBになって、そのぶん入門価格が大幅にアップしてしまったら興ざめだが、そこは9.7インチのiPad Proから“微増”程度に抑えたところは感心できる。Wi-Fiモデルは9.7インチの32GBが66,800円(税別)だったのに対して、10.5インチの64GBは69,800円(税別)。Wi-Fi+セルラーモデルは9.7インチの32GBが82,800円(税別)、10.5インチの64GBが84,800円(税別)となる。

 ただし、これにApple PencilやSmart KeyboardなどをiPad Proの体験を最大化するための“必需品”を買いそろえていくと、最終的にフルセットは10万円近くなり、あるいはそれを超えてくる。筆者も仕事で可搬性の高いノートPCの代わりとして9.7インチのiPad Proを購入しようと決めて、セットを揃えた後で「これならMacBook Airが買えたな…」と一瞬後悔したことを思い出した。もしiPadをWeb検索や動画視聴などシンプルな用途に限定して使う、iPad Proではなく9.7インチのスタンダードなiPadを選ぶ手もある。32GBのWi-Fiモデルが37,800円(税別)から購入できてしまう。今回、iPad Proにしかないサイズがふたつ揃ったこともあり、スタンダード機とのすみ分けはより明確になった。

■JIS配列対応のSmart Keyboardでテキスト入力がスムーズに

 iPad Proシリーズ専用のアクセサリーである「Smart Keyboard」は、今回はある意味でiPad Pro本体よりも大きな進化を遂げた。日本語JISキーボードにも対応したのだ。

 iPad Proにはいままで通り側面のSmart Connectorにカチッと装着する。Bluetoothワイヤレスキーボードとの大きな違いは、キーボードのペアリングや充電の手間が要らないこと。iPadを仕事中心で使いたい人は迷わず“Pro”の方にすべきだと、筆者が自信を持ってオススメする理由はこのSmart Keyboardが便利で使えるアイテムだからだ。

 キーのサイズやピッチ間隔、打鍵感は9.7インチのものから大きく変わった感じはないものの、JIS配列になってMacBookと同じ感覚でテキストが打てるので文書入力仕事の効率が驚くほど高まる。正直、本体の進化よりも、このキーボードが使えるならiPad Proを買い換える価値があると感じたほどだ。残念ながら今のところ9.7インチのiPad Proに対応するJIS配列のSmart Keyboardは発売される予定がないという。まだ1年ちょっと前に買ったばかりのユーザーにも目を向けてよ…と思うのだが、もう少し待って本当に9.7インチ用が出ないなら、10.5インチへの乗り換えも真剣に考えたくなってきた。

■秋の「iOS11」リリースでiPadの本領が発揮される?

 今回は10.5インチのiPad Proがハードウェアとして強化されたポイントについてしか触れることができなかったが、その真価が本当に問われるのは秋に最新版の「iOS 11」がリリースされた後になるかもしれない。iOS 11にはiPadシリーズの使い勝手が大きく変わるアップデートがふんだんに盛り込まれているからだ。

 最も興味深いのはMac OSと同じアプリケーションのランチャーである「Dock」が実装され、フォルダやファイルがiPadでも扱えるようになることだ。例えばiPadで撮影した静止画を、ドラッグ&ドロップ操作でメールに添付したり、作成したテキストファイルをフォルダ分けしながら管理もできるようになる。よりPCライクな操作感に近付くのだ。これまでもSplit ViewやSlide Overなどの機能によりiPadでもマルチアプリケーションの操作は可能だったが、ファイルが扱えるようになれば、いよいよMacBookの代わりにiPadを活用できる期待が膨らんでくる。

 ドラッグ&ドロップに対応すると、今度はトラックパッドやマウスによる操作がしたくなるかもしれない。タッチパネルというインターフェースはタップやスクロール操作と相性は抜群だが、画面に表示されるオブジェクトをつかんで移動する操作には不向きだと筆者は感じるからだ。今やiPadシリーズにとって大きなライバルになったマイクロソフトのSurfaceシリーズを選ぶユーザーの中には、マウス対応によるPCと変わらない操作感が得られることを理由に挙げる声も多いはずだ。iOS 11とiPadシリーズによる化学反応が従来のタブレットやPCの操作性を超えられるのか注目だ。

 新しいiPad Proシリーズの発売はiOS 11より一足早く6月なかばにスタートした。Apple PencilとSmart Keyboard、ハードウェアの組み合わせによる体験はまたこの世代でもしっかりと向上しているので、このタイミングで買ってしまってもいいし、あるいはiOS11とのマッチングを確認してから決めるという選択もアリだと思う。
山本 敦

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