昨年9月に正式公開されたアップルのモバイル向けOS「iOS 11」が、今春にまた大きなアップデートを迎える。今回は最新バージョンの「iOS 11.3」から追加・改善される機能の中でも、最も大きな目玉となるAR体験の進化についてポイントをまとめてみた。
■今までよりも色んな場所にARオブジェクトが置けるようになる
iOSにAR(拡張現実)のテクノロジーを活用したコンテンツ体験が加わったのは昨年にローンチされたiOS 11から。開発環境「ARKit」が整ったことから、App Storeには次々と新しいARアプリが増えている。iOS 11以降を搭載するiPhoneやiPadなどの対応端末が手元にあれば、視覚を刺激する新たなAR体験と誰もが手軽に触れ合える。
App Storeには無料・有料のAR対応アプリが続々と追加されている
アップルはiOS端末で楽しめるARコンテンツの質をさらに高めるため、アップグレードされた開発環境「ARKit 1.5」を発表。アプリ開発者に向けて提供を始めた。具体的にどんなところがパワーアップするのだろうか。
iOS対応のARアプリは、iPhone/iPadカメラでキャプチャした実空間のイメージの中にデジタル画像の仮想オブジェクトを重ね合わせて様々なエンターテインメントを楽しめるのが特徴だ。便利なユーティリティ系アプリもたくさんある。
これまでのARアプリでは実空間から検知した水平面にしか仮想オブジェクトを置けなかったが、iOS 11.3からは壁や柱など垂直面も認識できるようになる。円柱や緩やかに曲がった壁面など不規則な形の面も仮想オブジェクトを置く対象になる。アップデート後には、たとえば部屋全体の模様替えをシミュレーションできるARアプリが登場するかもしれない。
iOS 11.3から看板やポスター、図版を認識してその上にARオブジェクトを埋め込むこともできるようになる
看板やポスター、図版を認識してその上にARオブジェクトを埋め込むこともできるようになる。街頭広告や観光ガイドのビジュアルが一段とリッチになりそうだ。
さらにARオブジェクトの解像度が約50%アップする。オブジェクトへのオートフォーカスにも対応するようだ。ARオブジェクトのリアリティや表現力に磨きがかかれば、いつか遠くない将来にカメラでキャプチャしている実空間と区別が付かなくなる日が来るかもしれない。
■春からの新生活にお役立ちのARアプリコレクション
iOS 11.3の公開前に、まだiOS 11のARコンテンツを試したことがないという方がいればぜひこの機会に触れてみて欲しい。対応する端末は6s/6s Plus以降のiPhone、iPad Pro、第5世代以降のiPadなど「A9」チップ搭載以降のiOSデバイスになる。今回は春の新生活が始まる時期に役立ちそうなアプリを3つほど集めてみた。
「IKEA Place」は安価で高品質、新しい住まいにぴったりのアイテムが豊富にそろう家具・インテリアショップ、イケアのAR対応オンラインカタログだ。ソファにチェア、テーブルや収納家具など多彩なアイテムを選択して、本物の家具と同じデザイン・色合いの仮想オブジェクトを部屋に置いた様子がシミュレーションできる。家具を置いた様子は写真に撮って保存、またはメールやSNSでシェアもできる。家具の場合は、購入前にレンタルして仮置きしてみるといったことができないので、こんなARアプリがあれば雰囲気だけでもつかめて参考になる。
新しい住まいの家具選びに最適なシミュレーション用アプリ「IKEA Place」
IKEAのカタログから気に入った色やデザインの家具をアプリで検索できる
「MapFan AR」はiPhoneのカメラでキャプチャしている街並みに、目的地までの行き方を矢印や文字情報をオブジェクトとして表示しながら道案内してくれるARナビゲーションアプリだ。iPhoneを縦に構えると画面の上半分にARマップを、下半分には3D表示にも対応する地図画像が表示される。初めて暮らすことになった街も、このアプリさえあれば迷わず駅までたどり着ける。地図を見ながら近所にどんなショップや施設があるのか散策してみるだけでも楽しそうだ。
初めて足を踏み入れる街を歩く時に便利なナビゲーションアプリ「MapFan AR」
「Drops」はARビューを活かしながら外国語を学習できるユニークなアプリだ。実空間にふわふわと浮かぶARオブジェクトをタップすると外国語で単語の意味が表示される。AR体験を通して学ぶと何となく単語も頭に入りやすいような気がしてくる。学べる言語もなんと28種類とバラエティに富む。新しい職場、学校での生活をスタートしたきっかけにARで外国語を学んでみてはいかがだろうか。
ゲーム感覚で外国語が学べるARアプリ「Drops」
※iPhoneの音声入力で正確なメモは取れるのか?
山本 敦