世界最大級のIT・モバイルの展示会「MWC2018」が26日に幕を開けた。今年もソニーモバイルは大規模なブースを出展して、Androidスマホ「Xperia XZ2」「Xperia XZ2 Compact」など注目製品を発表した。日本のメディア向けに開催されたグループインタビューに参加して、新しいXperiaの気になるポイントについて開発者に聞いてみた。
なおスマートフォンのXperia新製品の機能やスペックの詳細については先にお伝えしているレポートを参照してほしい。
※「Xperia XZ2」「Xperia XZ2 Compact」速報レポート
グループインタビューに答えてくれたのは「XZ2」「XZ2 Compact」の商品企画を担当したソニーモバイルコミュニケーションズの染谷洋祐氏、並びにプロダクトデザインの責任者であるソニー クリエイティブセンターの飯嶋義宗氏だ。
商品企画を担当する染谷氏
デザインチームの飯嶋義宗氏
■大きく変わったデザインのポイント
新しいXperiaのスマートフォンは現行モデルの「XZ Premium」「XZ1」と比べて見た目にデザインが大きく変わっているし、カメラ機能もまた強化した。4K/HDR(ハイ・ダイナミック・レンジ)の動画コンテンツをスマホで撮って、HDR対応のディスプレイによって最高のコンディションで見られる。スマホ単体で楽しんでもいいし、USBメモリーを介して4K/HDRテレビの大きな画面で見ることも可能だ。
今年のMWCで発表されたXperia XZ2とXperia XZ2 Compact
新機種のデザインコンセプトについては「アンビエントフロー」と名付けて、光の反射や屈折によって生じる煌めきや色合いの変化を活かしている。一応各機種ごとにカラバリの名前は付いているが、なかなかブラック、シルバーといった感じにその見え方をひと言で表して伝えるのが難しくなった印象だ。XZ2のバックパネルでは「光の流れる様子」を再現。XZ2 Compactは「光の拡散」をテーマにしている。
新しいXperiaのデザインは光の演出がポイント
XZ2はリアにフラットな面がない曲面ガラスを採用。ガラスを使っているので、手に取った時の重量感はXZ1と比べてしまうと確かに感じられるが、緩やかにカーブした背面が手にしっくりと馴染むので持ちにくくなった感じはしない。たとえとして適切かどうかわからないが、iPhone XとiPhone 8 Plusを持ち比べた手応えに似ているかもしれない。
煌びやかなXZ2の背面
XZ2 Compactは透明な樹脂製パネルを背面から着色したことによって透き通るような色合いに仕上げた。パネルの触感はXZ2が光沢系で、XZ2 Compactはサラサラとしたマット系になる。
淡く光を拡散させるXZ2 Compactのデザイン
商品企画の染谷氏は「昨今のスマホはスペックや機能に詳しい方々はともかく、一般の方々は“見た目=デザイン”で選ばれることが多い。Xperiaも使う人に寄り添う機能美を最優先しながら、また新たなデザインにチャレンジした」として、コンセプトから一新したXperiaのデザインをアピールした。
■狭額縁にしなかったのはなぜ?デュアルレンズは開発中?
トレンドの峡額縁デザインにしなかった理由については、アンテナの感度などスマホとしての基本性能と品質を担保するためだったと染谷氏が説明している。ディスプレイサイズを可能な限り大きく・見やすくしながら、本体の横幅サイズは片手持ちによる操作がスムーズにできるようスリムにしている。どちらのモデルもディスプレイが縦方向に長くアスペクト比を18対9とした。
カメラのデュアルレンズ化はなぜ見送られたのだろうか。実は今回のMWCでは少し先の未来に向けて、ソニーが独自のスマホ向けデュアルレンズカメラユニットを開発していることも発表された。試作したモジュールのデモンストレーションもブースで公開されているが、ほぼ真っ暗な環境にカメラを向けても明るさと色合いを保った動画や写真を撮れる驚きの性能を実現している。
ISO感度は静止画撮影時51200、動画撮影時で12800にもなるという。ボケ味のコントロールができるのか、広角・望遠でズーム比率の仕様を変えるのかなどその他の詳しい仕様については明らかにされなかったが、時期的にはおそらくそう遠くない頃に発売されるXperiaに搭載されることになるだろう。今回発表されたXZ2/XZ2 Compactとどちらを選ぶべきなのか悩ましいところだ。
4K/HDR対応カメラの性能を比較。白トビせず細部まで被写体が捉えられる
現在開発中のデュアルレンズカメラ用センサーの実力を紹介する技術展示
■イヤホン端子がなくなった
現行モデルのXperia XZ1と比べて大きく変更された点はアナログのイヤホン端子がなくなったことだ。この決断の背景にある理由として染谷氏は、ワイヤレスイヤホン・ヘッドホンの人気が高まってきたことを挙げている。スマホの商品パッケージにはUSB Type-Cから3.5mmアナログイヤホンジャックへの変換アダプターが付いてくるので、現在使っているお気に入りのイヤホン・ヘッドホンが使えなくなることはないが、アダプターも一緒に持ち歩かなければならない煩わしさや、紛失してしまう不安は付きまとうことになるかもしれない。なおソニーブランドのUSB Type-C接続のイヤホン“第一号”「SBH90C」も同時期に発表されている。こちらを相方に使う手もある。
イヤホン出力がUSB Type-Cになる
XperiaとしてスマホのAI(人工知能)まわりの機能にはどのように取り組んでいるのだろうか。メーカーの中にはサムスンの「Bixby」やLGの「ThinQ」のようにスマート家電とのホームネットワーク連携も含めてAIプラットフォームをブランディングして力を入れるケースもあれば、HuaweiのようにオンデバイスでAI機能を実現するために性能を高めたSoCを独自に起こしたケースもある。ほかにも有名なスマホのブランドから「AI対応」のメッセージが賑やかに聞こえはじめてきた。
Xperiaでは早期からスマホのカメラで被写体となるシーンやオブジェクトに最適化されたキレイな写真をかんたんに撮れる「プレミアムおまかせオート」や、ユーザーの睡眠サイクルに合わせて寝ている間に内蔵バッテリーに負担をかけずに充電してくれる「いたわり充電」などの機能を搭載してきた。同社ではこれを”インテリジェンス機能”と呼んできたが、まさしくいま各社がAI対応として看板に掲げているエッセンスが多く含まれている。
ただ、AIアシスタントを搭載したスマートスピーカーが日本を含む世界各地で注目されるようになったいま、AIの方がインパクトとして強く残るキーワードであることは否めない。もしかするとXperiaも今後何らかの形でAI対応を前面に打ち出していく必要があるのかもしれない。
注目のXperia XZ2/XZ2 Compactは今春から世界各地域で販売がスタートする。日本にはいつ上陸することになるのか楽しみだ。
山本 敦