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スタートアップのオリンピック「Slush Tokyo」が開幕!主催者に聞くイベントの見どころ

2018-03-28 22:20:18
 スタートアップをハイライトした世界最大級のグローバルイベント「Slush(スラッシュ)」が、3月28日・29日の2日間に渡って東京ビッグサイトで4回目の開催を迎えた。イベントを主催するSlush TokyoのCEO、Antti Sonninen氏に今年のイベントの見どころや、近年のスタートアップの傾向などを訊ねた。

東京ビッグサイトで3月28日・29日に開催される「Slush Tokyo 2018」

エンターテインメントの雰囲気が漂う会場

開催4年目を迎えて、ますます勢いに乗るSlush Tokyo
 Slushは北欧・フィンランドの首都ヘルシンキで毎年11月に開催されている世界最大級のスタートアップイベントだ。多種多様な出展社が持ち寄る技術・サービスにいち早く触れるため、世界各国から投資家や企業、ジャーナリスト、学生が集まるという。フィンランドでの初開催は10年前の2008年。その後、フィンランドでの規模が拡大してきただけでなく、東京・シンガポール・上海にも開催地が広がってきた。東京での開催は2015年以来4回目。2017年には2日間に60カ国から5,000人以上の来場者が集まった。今年は6,000人に膨らむものと見込まれている。

大小様々な規模のステージでキーノートセッションが開催されている

 「Slush Tokyo 2018の開催テーマは“Braking Barrier(壁を壊す)”です」とSonninen氏が語る。「国籍や性別、年齢など私たちの間に横たわる壁を乗り越えながら、心躍るような未来をSlush Tokyoに集まる全ての人々が一緒につくる環境を目指しています」。

主催者を代表してCEOのAntti Sonninen氏にインタビューした

 世界各国から出展社、ビジターが集まりやすいようにホームページや会場内の案内には主に英語が“公用語”として使われている。驚くことに、イベント期間中に休みなく開催されるキーノートスピーチやトークセッションも英語でおこなわれ、同時通訳サービスも基本的には提供されない。Sonninen氏は「Slushは世界中から最高のスタートアップが集まるオリンピック」だからこそ、英語でのコミュニケーションが必須なのだと説明する。

 「英語でのコミュニケーションが便利、かつ合理的であるとはいえ、東京での開催なので参加者の中には英語が苦手な方がいることもわかっています。スピーチの後の質疑応答も英語で質問しなければならないため、しんと静まりかえってしまうようでは勿体ないですよね。そこで、Slush Tokyo独自の取り組みとして、よりアットホームな雰囲気で参加できるイベント“Slush Cafe”を企画しました」。

アットホームな雰囲気のSlush Cafe

 Slush Cafeでは出展社や投資家などビジターが会場内のオープンスペースで膝をつき合わせながら、互いの関心事についてじっくりと議論を交わせる。このほかにも大規模な商談スペースも設けられている。Slush Tokyoはスタートアップのショーケースとしてだけでなく、商談の場としても重要な役割を果たしている。

 Sonninen氏は昨今のスタートアップの状況をどのように捉えているのだろうか。

 「イノベーティブなハード機器やサービス、ソリューションを手がけるスタートアップが増えているだけでなく、その活動を支援する投資家や企業が5年前に比べてとても増えていると感じています」。

熱心な起業家・投資家が世界中から集まる

 今回筆者もSlush Tokyoの初日に会場を歩き回って、来場者が胸元に下げているネームホルダーを一瞥した限りでは投資家や企業などトレードビジターの比率がとても高かったように思う。

 Slushでは、参加した投資家と出展者が効率よく出会えるマッチメイキングシステムを提供している。それぞれがチケットを購入後、サイトにログインすればどの分野に長けた出展者がいるか、あるいはどの分野に興味を持って足を運ぶ投資家が集まるのかが一望できる。それぞれのリストからカテゴリー別の検索ができるだけでなく、“あなたにおすすめ”の投資家・出展者をレコメンドしてくれるサービスもある。

 Sonninen氏は「今年もSlush Tokyoに参加してくれた皆様によい成果があることを願いたい」と期待を込めて語っていた。

高校生が企業。開発したプログラミング学習の支援ツールとは
 Sonninen氏の言葉を裏付けるように、今年のSlush Tokyoには数多くの企業・行政団体が勢い盛んに活動するスタートアップを率いてブースを構えていた。

 100BANCH(ヒャクバンチ)はパナソニックとロフトワーク、カフェ・カンパニーの3社が東京・渋谷に拠点を構えて、2017年夏に始動したプロジェクトチームだ。責任者の則武里恵氏に100BANCHの取り組みを聞いた。

100BANCHの則武里恵氏に出展の手応えを訊ねた

 「100BANCHは“100年先の世界を豊かにする挑戦者”が集まるプロジェクトです。2018年にパナソニックが創業100周年を迎えることを機会に構想がスタートしました。東京・渋谷にオープンしたコラボレーションスペース“LOFT”は、建物の2階が“ガレージ”と呼ばれるプロジェクトスペースになっています」。

 100BANCHのプロジェクトに参加するためには35歳未満のリーダーが率いるスタートアップであることと、100BANCHを主要拠点として活動できることが条件になる。得意とするジャンル・形態の種類は問われないが、応募後には複数の見識者たちによる審査がある。ただし、審査は見識者の中から1名でも有望と太鼓判が押されたら通過。めでたくプロジェクトに参加できる。

100BANCHのブースも賑わっていた

 Slush Tokyoに出展していたYokiは、代表取締役社長の東出風馬氏をはじめ、都内の高校に通う現役の高校生が社員の大半を占める、100BANCHの現プロジェクト参加社の中でもとりわけユニークなスタートアップだ。彼らが出展していたロボットプログラミング学習に最適なハード=ロボット「HACO」と、プログラミングソフトの「HACREW」について東出氏に特徴を訊いた。

高校生起業家の東出風馬氏

 「HACREWではブロックをつなぎ合わせるようにして直感的にロボットプログラミングが学べるだけでなく、ソースコードを画面の隣に並べて見ながら理論的な理解も促進されます。ロボットのHACOは拡張性豊かなラズベリーパイのプラットフォームやレーザーカッターで成形した木材による本体を自由自在にカスタマイズできます」。

 同社ではHACO/HACREWを商品として完成させた後に、プログラミングスクールと提携して展開するようなBtoBtoCのビジネスモデルを想定しているそうだ。

 100BANCHの則武氏は、「プロジェクトに参加するスタートアップには、可能な限りアクセレレーションの機会を提供したい」と語る。100BANCHに参加できる期間は最大3ヵ月と短いが、その間に熱意を持って取り組むことによって、“ものづくり”のノウハウやネットワーキングの機会も訪れるという。Slush Tokyoへの参加についても「勢いあふれるプロジェクトの参加社たちに飛躍をもたらす機会」として位置付けた。

行政もスタートアップの活動を積極支援
 Slush Tokyoの会場には仙台市や横浜市も、地元の有望なスタートアップを集めて参加していた。

 仙台市では宮城をはじめ東北6県から有望な起業家を募って、その活動支援に力を入れている。Slush Tokyoへの参加も昨年に引き続き2回目となった。仙台市の産業政策部 地域産業支援課の白川裕也氏は「東北はものづくりが盛んな地域。高い技術を持つ中小企業やスタートアップを応援して地元を元気にしたい」と活動の狙いを述べている。

仙台市のブースに立つ白川裕也氏

 現在仙台市のスタートアップ支援プログラムには27社が参加している。仙台市ではものづくりや経営のノウハウを提供するためのセミナーや、Slush Tokyoのようなイベントに参加を希望する企業に向けた資金援助などにも力を入れている。

 横浜市では2017年の4月に、IoTを活用したビジネスの創出とサポートを目的としたプロジェクト「IoTオープンイノベーション・パートナーズ(I・TOP横浜)」を立ち上げ、国内外を問わず様々な企業・機関との連携を図れる体制を整えた。これまでに健康な暮らしをサポートするスマートホームを実現する「未来の家プロジェクト」や、自動運転車に関する実証実験などにも積極的に参加しながら「横浜=IoTの最先端」のイメージづくりにも力を入れている。

横浜市のブースに参加するハチたまは、ねこのためのヘルスケアデバイス「トレッタ」を出展

 今回のSlush Tokyoに参加したスタートアップは、いずれも昨年にスタートアップ支援を目的に横浜市が開催したコンテスト“テック・バイ・ザ・シー”で優秀な成績を収めた3社。その中の1社であるハチたまは、ねこの慢性腎疾患・慢性腎不全の初期症状を、毎日の排尿の様子と体重をモニタリングして把握できるペット向けのヘルスケアデバイス「トレッタ」を出展して注目を浴びていた。

 今後も横浜市ではI・TOP横浜のプロジェクトを中心に、ベンチャー企業と投資家のマッチングを促進するためのピッチイベントや国内外のイベント出展も積極的におこなっていく考えだという。

JETRO(日本貿易振興機構)のブースにはEmpathが“感情AI”を出展していた

 活況を呈するSlush Tokyoの会場にはスタートアップの“いま”が余すところなく反映されている。筆者も今回初めてその様子を目の当たりにして、これからは毎年ここに来るべきと実感した次第だ。イベントは明日29日まで開催されている。


※バルセロナ スタートアップの祭典に「日本パビリオン」が誕生……注目を浴びた技術と製品は
山本 敦

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