Netflixは18日、東京・青山にある同社の日本法人オフィスで記者発表会を開催。今年の秋に国内で開始予定のサービスについて、その一部詳細を明らかにした。
Netflixは米国を拠点にサービスを展開している、世界最大規模のインターネット映像配信事業者。同社は現在、世界50か国で6200万人の会員に利用されている。
米国での料金プランは画質などによって異なり、7.99ドル、8.99ドル、11.99ドルの全3種類。主に提供されているコンテンツは映画やテレビドラマ、コメディ、ドキュメンタリーなどで、これらを月額定額制で提供。HDや4Kといった高解像度での配信にも対応中だ。
なお、Netflixは映画やドラマなどで、自社制作のコンテンツを提供していることでも知られている。日本でのサービス開始時点では、ウォシャウスキー姉妹の監督によるSFアクション大作『センス・エイト』をはじめ、『マルコ・ポーロ』、『デアデビル』などのオリジナルシリーズが配信される予定。
その中には、レオナルド・ディカプリオが製作総指揮を担当し、アカデミー賞長編ドキュメンタリー部門にもノミネートされた『ヴィルンガ』も含まれるという。
■リモコンからボタン一つで視聴できるNetflix
会場では、まずNetflixの日本法人でビジネス デベロップメントを務める下井昌人氏から、Netflixの配信システムについて説明があった。その中でも、Netflixならではの利便性になっているのが、マルチデバイスへの対応だという。
「元々はPC向けにストリーミングサービスを提供していましたが、その対応端末はテレビに加えて、今ではブルーレイプレイヤー、ゲーム機、スマホやタブレットまで広がっています。その上で、テレビのリモコンに独自のボタンを用意するなど、デバイス上のすぐ見つかる場所にアイコンを用意しており、すぐにサービスを利用できます」
なお、国内では14年2月の時点で、すでに東芝からNetflixに対応したテレビが発売されている。その後に対応したパナソニックに加え、シャープ、ソニーを加えた4社のテレビでは、2Kや4Kに対応した15年以降発売の全ての製品がNetflixの視聴に対応し、それぞれのリモコンにNetflix専用のボタンが用意されるという。
「私たちは6年前からさまざまな家電メーカーとお付き合いしてきましたが、それぞれが開発した対応デバイスは、すべて社内のエンジニアがテストしています。なので、どの対応端末でもNetflixのストリーミング環境を提供することが可能です」
また、UIについても直観的であることを意識し、コンテンツをまとめたカタログのパーソナライズを追及しているという。なかでも、Netflixならではのユニークな特徴として、下井氏がフォーカスしたのがレコメンド機能だ。
「膨大なコンテンツから適切なものを、適切なタイミングで提供する。そのために、ログインしたプロファイルに応じ、過去の視聴履歴を元にパーソナライズされたコンテンツをサムネイルで表示しています。普段よく見ている作品の傾向から、お勧めの作品、ジャンルを学習。さらに、好きな監督やキャストにも紐づけて、6200万人の会員それぞれに合わせたカタログを作成しているわけです」
それに加えて、Netflixが提唱している、もう一つのクォリティが“すぐに始まり、止まらないテクノロジー”だという。それを表す機能の一つが、ドラマなどの各エピソードを連続再生する「ポストプレイ」だ。
「複数話におよぶドラマなどでは、放送時間が終わりに近づくと、次のエピソードのアナウンスが表示されます。何もリモコンなどを操作しなくても、映画を観ているような感覚で、全エピソードを一気に視聴できる。この“Binge-Watching(一気見)”という視聴スタイルが、アメリカで流行っているんです」
なお、Netflixでは14年3月に、世界に先駆けて4K動画の商用配信をスタートしている。こうした高画質な動画を、途切れることなくスムーズに再生させるのも、Netflix独自の技術だという。
「ユーザーのデバイス、場所、ネット環境を認識し、画質のコントロールを行っています。また、いち早く映像を再生させるために、まずはSD画質で放送をスタート。徐々に画質を上げていく可変型ストリーミングを採用しました。これにより、ドラマを連続視聴している際に、ネットが混むような時間になっても、画質調整により映像を止めることなく視聴し続けられます」
■スムーズな可変型ストリーミング
会場ではNeflix対応テレビをアメリカのサーバに接続し、ドラマを再生するデモが行われた。テレビの電源を入れて、メニューからNetflixのアプリを起動……といった面倒な操作をしなくても、テレビの電源がオフの状況から、ボタン一つでNetflixのホーム画面を表示。カタログにはレコメンドのコンテンツが表示され、ボタン一つで“番組情報の表示→再生”という操作がスムーズに行うことができている。
続くドラマの再生デモでは、画面上には映像品質が表示されており、配信開始後まもなく2Kまで向上した画質が、オープニングの終了までには4Kに変更された様子が確認できた。画質が変更される際にも、特にゆがみやコマ落ちは発生せず、ストレスなく高画質なコンテンツを視聴できそうだ。
一方、ポストプレイのデモでは、番組の残り時間が3分30秒ぐらいから再生をスタート。エンドロールの表示中に画面が左上へと縮小され、次のエピソードに関するアナウンスを表示。間もなく、エピソードの再生が自動で開始されている。
■最大のウリはオリジナルコンテンツ
では、映像コンテンツが多様化し、それを観る手段もさまざまな現代において、Netflixを月額課金で利用する意味とは何か。Netflixの日本法人で副社長を務める大崎貴之氏によると、そのメリットの一つにオリジナルコンテンツがあげられるという。実際、Netflixでは「ハウス・オブ・カード 野望の階段」で、ネット配信のコンテンツとしては初のエミー賞を受賞。多くの視聴者を熱狂させた。
「クリエイティブフリーという言葉をよく使っていますが、クリエイターを信じて作品を作っていただくというのが我々のポリシーです。話数などのフォーマットについても自由なので、ドラマでいえば、7時間や8時間にわたる壮大な映画を作っていただくイメージ。これはNetflixならではの革新的な方法だと考えています」
その一方で、Netflixの日本法人で代表取締役社長を務めるグレッグ・ピーターズ氏は、日本におけるローカルコンテンツの人気にも言及している。
「ローカルコンテンツを待望するユーザーの期待に応えるため、積極的にオリジナル作品の制作に取り組んでいきたい。それを世界に発信していくチャンスと考えています」
こうした、ローカルコンテンツの中には、日本が誇るアニメも含まれるという。
「日本人は漫画やアニメを見て育ってきて、その中にはすごいストーリーがたくさんある。素晴らしいメッセージ性を持つ作品もありますし、これらは日本の宝だと思っています」(大崎氏)
なお、日本発のローカルコンテンツについては、各方面のクリエイターとの話し合いも進んでいるとのこと。17日にはフジテレビからコンテンツの供給を受けるとの発表もあったばかりだ。
その一方で、現状ではサービス開始の詳細な時期、料金帯、コンテンツ本数などは全て未定となっている。
飛田九十九