■今回はKDDIのデータを分析
総務省が定めたガイドラインに沿って、通信大手3キャリアは2015年12月からスマートフォン「実効速度」の公表を開始した。同ガイドラインでは、計測場所、計測時間、計測ソフトなど、決められた一定の条件下で速度測定を実施し、結果を「箱ひげ図」と呼ばれる統計手法で集計・表示することが定められている。「箱ひげ図」では測定結果全体の“中央値に近い半数”が示され、各キャリアはこの範囲を「実効速度」として公式サイトやカタログなどで表記していく。
本稿では、上記ガイドラインの条件にできるだけ沿ったかたちで、通信速度測定アプリ「RBB SPEED TEST」のログデータをキャリア別に集計していく。前回のNTTドコモに続き、今回はKDDI(au)のデータについて集計結果をお届けする。
まず、KDDIが公式サイト上で発表した「実効速度」は、iOSとAndroidの数値を合算したもので、下り50~103Mbps、上りは非公開となっている。測定地点は政令指定都市および県庁所在地からランダムで選ばれた9都市に東京23区を加えた10都市、1500地点。混雑時間帯に各地点で3回ずつ測定した平均値をその地点における測定値としている。測定期間は2015年10月~12月で、測定端末は明記されていない。
「RBB SPEED TEST」で対象とするログデータの測定期間および測定場所は前回記事と同様で、2015年10月1日~12月31日の混雑時間帯(正午から午後9時)に、東京23区で測定されたデータを対象とした。さらに測定端末は2015年に発売された主要端末として「iPhone 6s/6s Plus」(iOS)、「AQUOS SERIE/SERIE mini、Galaxy S6 edge/A8、Xperia Z4/Z5」(Android)を選定。上下いずれかの結果が128kbpsを下回るものは速度制限の可能性を考慮して除外した。
■ログデータ分析では下りの実効速度21.99~65.48Mbps、上りは3.50~7.35Mbps
上記条件でデータを集計したところ、対象データ数はiOSが7,910件、Androidが1,773件だった。順に集計結果を見ていく。箱ひげ図で中央値に近い半数の「実効速度」を求めると、iOS下りの実効速度は21.99~65.48Mbps、上りは3.50~7.35Mbps。下り最小値は0.13Mbpsで最大値は173.13Mbps。続いてAndroid下りの実効速度は18.10~54.58Mbps、上り速度は3.62~7.44Mbps。下り最小値は0.22Mbps、最大値は193.39Mbpsとなった。なお、そもそも測定に使用しているソフトが異なるため、この数字はあくまで参考として見ていただきたい。
下りの実効速度は、KDDI公式の発表と比べると見劣りするものの、まずます悪くない数値。特にiOSは優秀だった。一方、公式では非公開だった上りの実効速度は両OSともに一桁Mbps台にとどまっており、少しさびしい結果となっている。
今回も、総務省のガイドラインを参考にログデータを分析してみた。次回はソフトバンクのデータについて集計結果をお届けする。
白石 雄太