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【レビュー】モレスキンがスマートデバイスに!? 手描きの文字&イラストを即デジタル化

2016-05-27 08:30:36
 ふだん使いのダイアリーやノートブックにモレスキンの製品を使っているという方も、ビジネスマンを中心に多くいるものと思う。紙の豊かな質感が楽しめるステーショナリーブランドというイメージが強いモレスキンだが、実はタブレットと連動するデジタルダイアリーにもユニークな製品がラインナップしている。今回は発売されたばかりの最新モデル「スマートライティングセット」を使ってみた。

■デジタルステーショナリーにも積極的にチャレンジしてきたモレスキン

 モレスキンからは、これまでにEvernoteやAdobeのPhotoshopやIllustratorなどのPCアプリケーションと連動して、紙のノートに書いた文字や、描いたイラストをiPhoneなどスマホのカメラでキャプチャーして、デジタル化できるステーショナリー製品が発売されてきた。今回発売されたスマートライティングセットは、“スマートペン”でノートに描いた文字やイラストを、カメラを使わずにタブレットなどでデジタルとして取り込んで、メールやSNSで共有できるところが進化したポイントだ。

 アップルが発売したiPad Proは、専用アクセサリーのApple Pencilと組み合わせれば、紙に文字やイラストを描く感覚でタブレットの画面にスムーズな手描き入力ができることで話題を呼んでいるが、モレスキンのスマートライティングセットの使い方はこの対極にある。つまり、紙のノートにインクペンで書いたテキストやイラストを即座にデジタイズできるという、新しい感覚のツールなのだ。

 スマートライティングセットを構成する主要デバイスを紹介しよう。まずはノートである「ペーパータブレット」だ。イタリアのプロダクトデザイナー、ジュリオ・イアケッティ氏がデザインを手がけた専用のノートで、いかにもモレスキンらしい高級感のあるデザインに仕上げている。このノート自体には電気が通っていないが、開くと描くページに微細なグリッドパターンがプリントされている。これを、セットの基幹デバイスであるスマートペン「ペン+」の先端に搭載するカメラで読み取って、文字やイラストが描かれている座標を認識して、Bluetooth経由でモバイル端末に送信。専用アプリ「Moleskine Notes」、または「Neo Notes」の画面に表示する。

 その他、パッケージに同梱されているのはペンを充電するためのUSBケーブル、0.7mmのゼブラの替え芯1本、クイックガイドだ。替え芯以外は各デバイスともに発売時点ではセット販売しか行っていない。ペーパータブレットのカバーはブラック1色。あえてカバーから紙をはみ出させて独特のラウンドフォルムに仕上げたデザインは印象に残るが、カバンの中に直接入れて持ち歩くとエッジが汚れてきたり、ダメージが目立ってこないか少し心配だ。

 なお、アプリは「Moleskine Notes」がiOSにしか対応していないため、Android端末で使う場合は「Neo Notes」を選ぶ。タブレットだけでなくスマホでも使えるが、手描き入力した内容をプレビューする際にはある程度大きな画面の端末を使った方が使い心地は良さそうだ。今回筆者は9.7インチのiPad Proを使っている。

■iPad Proと組み合わせて使ってみた

 まずは機器どうしをペアリングする。iPadのBluetooth機能をオンにして、アプリを入れてから起動する。スマートペンの先端にある電源ボタンを3秒間押して、LEDが青色に点滅すると、あとは自動的にペアリングが完了する。ペンのバッテリーは最大時間まで連続使用が可能だが、使用する前に都度30分ほど充電することが推奨されている。充電はmicroUSBケーブルで行える。

 ノートのページに文字を書き進めてみる。書き味は普通の紙のノートに油性のボールペンで文字を書く感覚と同じだが、アプリの画面にもほとんどタイミングのずれなく、ノートの内容がシンクロしながら描かれるのが不思議だ。このBluetooth経由の読み取り技術は、NeoLAB Convergence社が開発して特許を取得したもので、これをモレスキンのスマートライティングセットが採用したかたちだ。

 手描き入力中は、基本的にテキストオンリーのメモを取る際は紙のノートだけ集中して見ていればよい。ペン先の太さや色の変更は全てアプリの画面から行う。また新規ページに移るときもアプリから操作する。筆圧もおおよそ再現されるが、実際にノートに書いた文字よりも、デジタル化されている文字がほんのわずかに痩せて反映されるようだ。イラストを描く際には傍にタブレットを立てかけた状態で、デジタル化されている線を確認しながら濃淡をコントロールする方がしっくりときた。いずれにせよ、ペンの色を頻繁に変えるならタブレットの画面を見ながらの作業になる。

 「ペン+」のデザインは高級文具のように洗練されている。手に持つと重すぎず、でも軽くて安っぽくないほどのしっかりとした手応えを感じる。フォルムは三角軸で握りやすいが、筆者はもともと筆圧が強いので、ペン先が滑らないように少し力を入れて長く使っていたら指先が疲れてきた。ペンの芯は先端から手でつまんで簡単に引きだせるので交換は簡単だ。

 テキストを書いたり、イラストを描く時もペン先の動きが正確に、素速くトレースされるので描きながらストレスは感じない。ただ、ペンの太さを一番太くしてもべた塗りにはやや太さが足りないので、イラストは線画の方が向いている。また描いた内容をさっと消したい時にも消しゴムツールがないので、いったん「編集モード」を呼び出してから、タブレットの画面で消したい箇所を指定して消さなければならないのがちょっと面倒だ。スマートペンから直接操作できる消しゴム機能が欲しい。ただ、同製品の場合はタブレットの画面上だけでなく、紙のノートに描いた内容も消せないとおかしなことになるので、パイロットの“こすると消えるフリクション”のような物理的なソリューションも組み合わせる必要がありそうだ。

 ペンのLEDは電源のオン・オフを知らせるだけでなく、文字色を選択するとその色に変わる。文字色はカラーパレットから選択したものを新規に追加できるので、カラフルなイラストも自在に描ける。iPadでマルチタスクで使う際に、セカンドのアプリを画面右側に表示させる「Slide Over」には対応していたが、2つのアプリを同時に表示・操作する「Split Over」には非対応だった。お手本のイラストをブラウザアプリで表示しながら、「Moleskine Notes」アプリで絵を描く際には、ペンの色を変えるたびにブラウザアプリ側が後ろに隠れてしまうので、都度呼び出しが必要だ。

 ペーパータブレットの紙は斤量100gと厚手で、上質な紙を使っているので描いた内容が裏映りしない。ノートのページが両面とも使えて経済的だ。タブレットの方は新しいノートやページを作り放題なのだが、ペーパータブレットの方は描いたぶんだけ紙が減っていく。ペーパータブレットだけ買い増せるようにバラ売りが早くスタートして欲しいものだ。

■書いたテキストやイラストはデジタルデータにして共有できる

 描いたテキストやイラストはメールなどのアプリと連動して「共有」ができる。タブレットの画面からは、トップ中央に表示されるアイコンをタップして機能を呼び出す。紙のノートからも、右上にある手紙アイコンをペンでタッチすれば共有機能が起動できる。共有のメニューには「テキスト変換」や「音声メモ」「リプレイ」「編集モードへの切り替え」などがアイコンで並ぶ。

 「テキスト変換」はタブレット側のノートから手描き文字認識を行ってテキストファイルを生成するものだ。手描きで取ったメモをテキストデータに起こして、そのまま原稿の草稿にできたらどれほど便利だろうと、筆者も使いながら夢が膨らんだ。実際に使ってみると認識精度はそこそこ高いのだが、日本語と英語を混在させてしまうと、どちらかの言語で書いた文字しか一度に認識できないのが悩ましい。また縦書きの文章は一文字ずつ改行が入ってしまう。

 ペンとアプリを起動している状態であれば、ペーパーダイアリーに描き込むと即座にページを認識して、該当するページに描き込んだ内容が反映される。アプリが立ち上がっていれば、例えばスマートペンとペーパータブレットだけを手に持って、iPadをカバンの中に入れたままでもアプリに記録は行われている。また、再度ペアリングをすれば、ペアリングが切れた状態で書いたデータも1000ページ分はストックし、あとから一気に読み込んでくれるという。

 イラストを描く際などに認識しておきたいことは、紙のノートに描いた内容をアプリのノートで認識できる範囲との誤差だ。一枚のページはノートの製本されている方と上側の余白は目一杯使えるが、反対にページの外側と下側は描いた内容が切れてしまう場合がある。

 そのほかのユニークな機能についても触れておこう。「音声メモ」はタブレットのマイクを使ってノートに簡単なボイスメモを添付できる機能だ。「リプレイ」はそのページに描いた内容を文字通りリプレイできる機能で、イラストを描いたときにその手順を振り返ったりできるのが楽しい。

 ノートに「タグ」をつけておけば、あとから検索に使える。ノートに書いた内容はキーワードごとにも検索ができる。またグローバルメニューに設けられた「カレンダーから探す」機能を使えば、ノートに描いた内容を場所や時間ごとに細かく振り返ることができるので、仕事で取ったメモなどがとても探しやすい。紙のノートではページをめくりながらメモ書きの内容を目で見て探すしかないので、これこそデジタル技術によって受けられる大きな恩恵だといえる。

 大事な内容を消してしまわないよう、ノートごと書き込み不可の領域に保存する「ノートボックス」の機能もある。紙のノートは何冊もたまってくるとスペースを取るので捨ててしまうという方も多いと思う。あのときにとったメモの内容を、ずいぶん時間が経ってから確認したくなった時には、もう手元にノートが残っていないという苦い思いを筆者もこれまでに何度も体験してきた。モレスキンのスマートライティングセットならワーキングスペースが効率よく使えて、メモ書きの記録をいつでも素速くチェックできて便利だ。

 「共有」をタップすると、タブレットの側に残っているページ内容を画像やPDF、テキスト、Adobeイラストレーターと互換のある「SVG」形式のファイルにしてメールなどで送れる。画像やPDFの場合は、背景のグリッドごと残すパターンと、背景をホワイトか透明にして画像データに残せる。Evernoteアプリと連動させたり、Google Driveのクラウドストレージに同期させられる機能もなかなか使い勝手が良い。

 ペーパータブレットはモレスキンのデイリーダイアリーとほぼ同じサイズだが、カバー部分が少し特殊な形状をしているため、従来のデイリーダイアリーを使い慣れている方にとっては最初の移行時に戸惑うこともあるかもしれない。また、ある程度重さがあるので女性がバッグに入れて持ち歩くには少し重く感じられるという声もきっとあるだろう。もう少し判型の小さいものや、カバーの色が明るいバリエーションが今後登場することにも期待したい。

 また専用のペンとペーパータブレットをまとめて収納できる専用ケースなど、アクセサリーも充実してくれば、文具としては今までにない使い方ができる、ユニークでかつ便利なアイテムとして広く受け入れられる可能性を持っていると感じた。あとはオンラインストアで28,188円(税込)という価格も気になる。

 やっていることの先進性を考えたら妥当な気もするが、やはり購入するには少し尻込みしてしまう。ペーパータブレットのページを使い切ってしまったら、交換用の単品販売がどれぐらいになるのかも気になるところ。試しに使ってみたくなる価格設定にもぜひ挑戦してほしい。

[お詫びと訂正]初出時に「ペアリングが切れた状態では、その間ペーパータブレットに描いた内容は後からアプリを起動しても反映されない」と記述していましたが、正しくは「ペアリングが切れた後、再度ペアリングをすれば、ペアリングが切れた状態で書いたデータも一気に読み込む」ため、記述を訂正いたしました。

協力:モレスキン
山本 敦

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