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ついに日米同時上場のLINE! 出澤社長が語った「陣取り合戦は終わった」の先にある戦略とは

2016-07-15 21:03:53
 LINEは15日、上場に関する記者会見を行った。7月14日にニューヨーク証券取引所に上場、翌15日に東京証券取引所一部に上場した同社。日本の企業として初めて、ニューヨーク証券取引所と東証一部の両方に上場した。記者会見では、今後の戦略などが語られた。

■日米で上場した理由

 記者会見にはLINE 代表取締役社長の出澤剛氏が登壇した。同氏は上場した狙いについて「企業の透明性・信頼性を向上できる」「成長のための投資が行える」と説明した。具体的には「LINEはコミュニケーションのインフラになりつつある。より透明性を高め、信頼性を向上させていくことが重要になると判断した」「動きの速いこの業界においては、必然的に世界レベルでの競争に巻き込まれる。こうした環境下でさらに成長すべく、事業を拡大するための資金を調達していきたい」と説明している。

 日本で上場した理由については「世界中で最も多くのLINEユーザーを抱えているのが日本。我々のホームマーケットであり、売上も一番高い」、またアメリカで上場した狙いについては「世界中のユーザーに使っていただきたいという決意の表れ。今後、世界でのプレゼンスを上げ、さまざまな情報にも世界レベルで接していきたい」と説明している。

■マネタイズに成功した

 親しい人同士のコミュニケーションツールとして誕生したLINE。この数年間で、人とサービス、人とコンテンツ、人とビジネスのあり方を変えてきた。同社では今後、サービス展開をさらに拡大し、利用者の生活をより便利にしていきたい考えだ。

 LINEの一番大きな価値、それは“ユーザーとの深い結びつき”だという。出澤氏は「DAU/MAU率というユーザー様とのつながりを示す指標がある。主要4か国でのDAU、MAU率は73%で、これは北米におけるFacebookと遜色ない数字。特に日本に限定すると80%を超える」と胸を張った。

 日本国内においても、また世界的に見ても、メッセンジャーサービスがスマートフォンの中で最も使われるサービスになりつつある。その一方で、メッセンジャーサービスはマネタイズ(収益化)が難しいとも言われてきた。LINEが収益化に成功した理由は、メッセンジャーサービスをさまざまなポータルサービスへと続く入り口にできたこと。同社ではそれを“スマートポータル”と呼び、重要な戦略と位置付けてきた。

 2015年に売上は1,200億円まで伸びた。そのうち海外における売上が約30%を占めている。「サービスを開始して5年で、高い収益性を実現した。いま売上が伸びているのが広告で、今後も需要がある。全体的に見れば、広告とゲームによるバランスの良い収益構造になっている」と出澤氏。

■海外戦略

 いまLINEが注力している国は、日本、タイ、台湾、インドネシアの4か国。4、5年前は全世界をターゲットにしていたが、2015年あたりから世界のスマートフォン市場の動きを勘案して戦略を転換した。「スマートフォンメッセンジャーの陣取り合戦は、ほぼ終わった」というのが出澤氏の持論だ。

 上記4か国におけるLINEの成長率は、2016年3月で前年比23%増となっている。「4か国の人口を合計すると5億人。特にタイ、インドネシアに関しては今後、大きな経済成長が見込める」(出澤氏)として期待を寄せている。

 同社の海外戦略、それは単なるローカライズを超えた“徹底的な現地化”にあるという。LINEでは、それを“カルチャライズ”と呼んでいる。「アメリカ西海岸の世界的な企業には、便利なサービスを世界共通のプラットフォームで展開して、効率よくグローバルでのシェアを獲っていくという考え方が一般的。しかし我々はユーザー様の側に寄り添い生の声を聞くことで、現地における最適なサービスを展開してきた。そうすることで、後発サービスにも関わらず各国でシェアを獲ってきた経緯がある」と出澤氏。

 例えばインドネシアで調査した結果、「学校の友達」が重要なキーワードとして浮かんだ。そこで、LINEの中で学校の友達を探す機能を付加した。これは日本では提供されていない機能だ。また昨年は、インドネシアで昔ヒットした恋愛映画の主人公たちを広告に起用した。「当時高校生だった彼らが2015年に、LINEをきっかけにして出会うというもので、インドネシアの方たちの琴線に触れることができた。こうしたマーケティング上の成功もあってシェアが伸び、同国トップシェアのBlackBerry Messenger (BBM)を猛追している」(出澤氏)という。

 では今後、LINEでは新たな国に打って出る考えはないのだろうか?出澤氏は「この状況で新しい国に展開しても、成功する確率は低い。いま海外では、メッセンジャー機能に特化したサービスが主流。それは国内の通信環境や、通信会社が提供するデータプランに依るところが大きい。しかし近い将来、LINEのようなスマートポータルが世界的に流行する時代が来る。それがLINEの次のモメンタムになると考えている。したがって、それまでに主要4か国でスマートポータルを完成させていく」と説明した。

 出澤氏は、最後に「この5年間、誰もやったことのないサービスに挑戦し続けてきた。たくさん失敗もしたが、多くのことを学べた。今回、東証に上場して多くの株主の方を招き入れた。大きな期待を寄せられていると実感している。次の挑戦へ向かう新たなスタートの日となった。世界を見据えつつ、よりユーザー様の生活に密着したサービスになるよう尽力していく。是非、ご支援をいただければ」と言葉に力を込めた。
近藤謙太郎

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