■社会現象となった「ポケモンGO」。通信インフラへの影響は?
7月22日、国内でもついにリリースされたスマホ向けARゲーム「ポケモンGO」。配信されるや否やSNS上には関連ワードが溢れ、スマホ画面をのぞきこんでゲームに興じる人とそこかしこですれ違うようになった。関連したトラブルも少なからず報告されはじめ、関係省庁や鉄道各社等が注意を促すなど、まさに社会現象が巻き起こっている。
そんな「ポケモンGO」だが、同時に多数のユーザーが利用するとなると、通信インフラへの影響も気になるところ。特にMVNO事業者が提供する格安SIMサービスは通信混雑の影響を受けやすい。そこで、スマホ向けの通信速度測定アプリRBB SPEED TESTのログデータを確認し、実際に格安SIMの通信速度がどんな影響を受けたのか探ってみることにした。
今回対象としたのは、MM総研が今年6月に発表した国内MVNO市場シェアでTOP3に入った「OCNモバイルONE(APN:lte-d.ocn.ne.jp)」、「IIJmio(APN:iijmio.jp)」、「楽天モバイル(APN:rmobile.jp)」の3サービス。それぞれ、「ポケモンGO」が配信された7月22日の前後1週間、7月15日から29日まで各日の下り平均速度について推移を確認した。なお、今回はAndroid端末による測定だけを集計し、極端に低い数値(下り200kbps以下)のデータは速度制限の可能性を考慮して除外している。
■格安SIMサービス大手3社の速度を検証。影響は一時的か
まずはOCNモバイルONE。「ポケモンGO」配信の前日21日までの1週間では1,310件の測定があり、下り平均速度は7.03Mbps。対して配信当日(22日)から29日までの1週間では測定数1,379件で下り平均5.02Mbpsと約2Mbps遅くなっている。日ごとに見てみると配信当日(22日)が下り2.43Mbpsで極端に低く、その翌日からは回復傾向にある。
次にIIJmio。15日から21日の測定数は1,782件で下り平均速度は11.86Mbps。22日から29日には2,050件の測定があり、下り平均は12.13Mbps。こちらは逆に配信後の平均速度の方が速くなっているが、配信当日の22日に関しては5.04Mbpsと落ち込んだ。IIJは「特定アプリケーションの配信に伴う通信品質の悪化について」というお知らせを公式に発表しており、「ポケモンGO」による影響を暗に認めていたが、数値上もそれは見て取れる。ただし翌23日は13.84Mbps、24日は15.68Mbpsと持ち直しており、影響は一時的なものだったと思われる。
楽天モバイルは、21日までの測定数が513件で下り平均速度は19.00Mbps。対して22日以降の1週間では768件の測定で下り平均速度12.21Mbpsとなり、7Mbps近くの差が出ている。なお、やはり配信当日がもっとも落ち込み、8.95Mbps。その後は21日以前の水準には届かないものの、10Mbps以上に回復している。
■今後、大きな影響は起きづらい
格安SIM大手3サービスの通信速度の推移から、「ポケモンGO」の影響について見てきた。グラフを見てもらえれば分かる通り、各社共に配信当日の22日は速度が低下し、翌日以降は回復するという傾向にあった。恐らく、22日はアプリインストールおよび初回のログイン時のアクセス集中により大きな影響を受けたものの、通常のプレイ時の通信トラフィックはさほどでもないため翌日以降は安定したということだと考えられる。今後もアプリのアップデート時などに一時的な影響が出ることはあるかもしれないが、同ゲームが由来で継続的に通信混雑が続くような状況は発生しづらいだろう。
白石 雄太