LINEが、いよいよ格安SIMサービス「LINEモバイル」を開始する。月額500円からのプランを提供、“LINEで費やすパケット通信費がノーカウントになる”といった競合他社では実現できなかったサービスを展開していく。LINEモバイル公式サイトでは5日より、2万契約限定の先行販売が開始した。LINEモバイルは10月1日に本格スタートする。
LINEでは今年の3月に開催した「LINE CONFERENCE TOKYO 2016」においてLINEモバイルの概要を発表した際、“今夏を目処にサービスを開始する”としていた。晩夏とはなったが、満を持してこの日の発表にこぎつけた形だ。すでにさまざまなMVNO(仮想移動体通信事業者)が展開するなか、最後発のLINEモバイルはどのようなサービス内容で、どこまでシェアを獲得できるのだろうか。
記者説明会に登壇したLINE 取締役 CSMOの舛田淳氏は、その冒頭「LINEでは人と人、人とサービス、人とコンテンツの距離を近づけていく。LINEを入り口として、1日の生活のすべてを支援していく世界、“スマートポータル構想”を掲げている」とブランド戦略を説明。そしてLINEモバイルの提供により、その実現に向けて大きく前進できると期待を寄せる。
ある調査機関によれば、2015年の時点で日本国内のスマートフォン普及率は56.9%だという。つまり日本の消費者の半分が、まだスマホを使っていないことになる。これについて舛田氏は「先進国でも低い数字。そこには消費者の不満があるからではないか」との見方を示す。そして“消費者の不満”について、料金やプラン内容がニーズにマッチしていない、画一的なサービスのために人によっては過剰あるいは不足という印象を与えている、といった理由を挙げた。スマホの普及率を上げることが、LINEの利用率を上げることにつながる。LINEモバイルを開始する狙いもそこにある。では具体的には、どのようなサービス展開を考えているのだろうか。
■サービスの詳細
続いて登壇したLINEモバイル 代表取締役社長の嘉戸彩乃氏がサービスの詳細を説明した。同社はLINEの100%子会社。LINEモバイルの特徴は、LINEの使い放題、ドコモ回線の利用による安定した通信品質の維持、月額500円(税抜、以下同)から利用できるLINE使い放題プランの提供、LINE Payでの支払いに対応、月額使用料の1%がLINEポイントとして貯まる、といったもの。LINEの使い放題とは、LINEの音声通話、トーク、画像や動画の送受信、タイムラインの利用時に消費するパケットをカウントフリーにすることを意味している。これは全プランで対応する。
料金プランには、2つのコースを用意した。「LINEフリー」では、データ通信のみが月額500円、データ通信+SMSが月額620円、データ通信+音声通話が月額1,200円。データ通信容量は各1GBとなる。嘉戸氏は「ライトユーザーに便利にお使いいただける。LINEを始めたいからスマホを持ちたいという中高生、家族の声を共有したいというシニア層など、エントリーユーザーにも使いやすい」と説明した。
【LINEフリー】
●基本機能:
LINE使い放題(音声通話・トーク、画像、動画の送受信、タイムライン)とデータ通信1GB
・基本機能のみ=月額500円
・基本機能+SMS=月額620円
・基本機能+音声通話付き=月額1,200円
※各税別
それに対して「コミュニケーションフリー」は、一般ユーザーからヘビーユーザー層までを想定したプラン。3GB/5GB/7GB/10GBのデータ通信容量を選択できる。データ通信+SMSを月額1,110円から、データ通信+音声通話を月額1,690円から提供する。同プランではLINEに加えてTwitter、Facebookも無料で使い放題になるのが特徴。これについて嘉戸氏は「モバイルの核はコミュニケーションにある。大容量のパケットを消費した月にも、Facebook、Twitterの利用は担保すべき」と説明した。
【コミュニケーションフリー】
●基本機能:
LINE(音声通話・トーク、画像、動画の送受信、タイムライン)、Twitter(タイムライン、ホーム、ニュース、通知、メッセージ機能、プロフィール編集)、Facebook(タイムライン・ニュースフィードの投稿、リクエスト、お知らせ、その他の画面表示、プロフィールの編集)のすべてが使い放題
<基本機能+データ通信+SMS>
・3GB=月額1,110円
・5GB=月額1,640円
・7GB=月額2,300円
・10GB=月額2,640円
<基本機能+データ通信+音声通話>
・3GB=月額1,690円
・5GB=月額2,220円
・7GB=月額2,880円
・10GB=月額3,220円
※各税別
いずれのコース、料金プランでも500円/ 0.5GBで追加購入が可能。LINEでつながっているユーザー同士であれば、誰とでもデータ容量を送り合うことができる。データ容量の残量は、LINEモバイル公式アカウントのトーク画面で簡単に確認が可能。なおトークでは、疑問点などの問い合わせにも対応する。このほかフィルタリングサービスを無償で提供する。これについて嘉戸氏は「LINEは社会的責務のある、インフラサービス。未成年者保護を第一に考えている」と説明している。
LINEモバイルでは、今回のローンチを「LINE モバイル1.0」と定義。今後、定額制音楽聴き放題サービス「LINE MUSIC」において、音楽コンテンツをダウンロードした際に発生するパケット費をカウントフリーにする、などの追加サービスを考えている。
■ユーザーの同意が必要
スマートフォンでは、さまざまなアプリを同時に利用する。カウントフリーの対象サービスかそうでないかを、どうやって識別しているのだろうか。嘉戸氏によれば、LINEモバイルに回線を提供するNTTコミュニケーションズの保有設備を利用しているという。具体的にはIPアドレス、ポート番号、パケット内容のうちヘッダの一部(テキスト、動画、画像などのデータ内容を含まない)を機械的、自動的に識別しているとのこと。
つまりカウントフリーの実現にはコンテンツプロバイダとの連携が必須で、同時にユーザーの理解と同意も必要不可欠だ。嘉戸氏は「通信の識別については、抵抗感を持たれる方もいらっしゃる。したがって利用の申し込み時に、個別・具体的に明確な説明を行い、同意をいただくことでサービスを提供させていただく。誰がどのような方法で、どうやって識別するのか、同意していただいた方のみお申し込みいただける」と念を入れて説明していた。
なお、初月の月額基本料金は無料。ただし、初月に解約した場合には1ヵ月分の基本料金がかかる。また、音声通話SIMの契約者は、利用開始日から起算し、利用開始日の翌月を1ヵ月目として12ヵ月目の末日まで(末日を含む)に、解約もしくはMNP転出をする場合は、9,800円の解約手数料が発生するという。
近藤謙太郎