NTTドコモは19日、2016年のスマホ新商品の記者発表会を開催した。イベントでは新しいプリペイドタイプのdカードが発表されたほか、将来への取り組みとしてドローンを活用したビジネスを模索していく考えも明らかにされた。
発表会の後、記者を集めた囲み取材の場で代表取締役社長の吉沢和弘氏が事業戦略の詳細を語った。
--- なぜ今回格安のオリジナルスマホ「MONO」を開発したのか。
吉澤氏:ドコモはこれまでもフラグシップからローエンドまでバランスよくラインナップを揃えてきたつもり。今回もバラエティを広げたいという思いから開発した。価格を安くしたのはベーシックなスマホを楽しんでもらいたかったから。
--- MONOは相当安値だが、総務省による端末料金のガイドラインには触れないのか。
吉澤氏:総務省の端末販売のガイドラインの中には廉価端末の扱いについても記載がある。卸値が3万円以下の端末についてはガイドラインの適用外になるので、ルールに抵触する心配はないと考えている。廉価端末のルール内に入っていると考えているし、実際にそうである。
--- タイミングが今になった理由は。
吉澤氏:ローエンドスマホは品質が悪いというレッテルが生まれつつあったので、ドコモがいま品質の良いものを出してこれを覆したかった。
--- ここまで安値にしてしまうとドコモに儲けはあるのか。
吉澤氏:調達から卸売まで計算して、適切な価格に設定している。トータルで利益は出せている。
--- 格安SIMフリーに対抗することも考えたか。
吉澤氏:結果としてユーザーになる方々は比較されるだろうが、特別意識はしていない。ドコモとしてはバランスの良いラインナップを揃えることが目標。
--- 他のラインナップの売れ行きに影響はでないだろうか。
吉澤氏:そうはならないと思う。デザインや機能がそれぞれ違うし、ユーザーのニーズもさまざま。例えばFeliCaなど、ある方にとっては絶対に必要な機能にMONOが対応していない場合もある。
--- 今回のラインナップにサムスンのGalaxy Note7がない。発火事件の影響はあったのか。
吉澤氏:私たちはGalaxy Note7をラインナップに入れることを検討していたが、今回世界各地でのトラブルが発生したため、私たちとしてはラインナップとして取り扱わない判断を下した。ベンダーから日本での販売を見送りたいという提案もあった。
--- Note7の取り扱いを最終的に断念したタイミングはいつごろか。
吉澤氏:夏に最初の発火報道があり、サムスン電子が交換対応を実施した後に、また今月に入って交換済製品の発火報道があり、リコールが決まったところで当社も導入見送りを判断した。サムスン電子からも日本での発売を中止したいという申し出があった。
--- Note7のリコールがほかのサムスン製端末にまで影響が及ぶだろうか。
吉澤氏:春から発売している端末に今のところ影響はない。
--- 2016年冬はいつもならあるサムスンのハイエンド端末が不在になった格好だが、どうカバーする。
吉澤氏:Galaxy Noteシリーズを期待していたユーザーもいるだろうから、これから対策を練っていきたい。他のフラグシップ端末をおすすめしてギャップを埋めることになるだろう。
--- dカードプリペイドのターゲット層は。どれぐらいのボリュームを狙うのか。
吉澤氏:日本の場合はまだ現金決済が多い。ドコモはdカードをやってきて、使い過ぎないようリミットのあるプリペイドカードへの要求は大きいことがわかっていた。これに応えるという意味でも追加した。比率はまだどれぐらいになるか、ここでは申し上げられないが、現在の非現金決済のうち、クレジットとプリペイドの比率ぐらいまでには持っていきたい。プリペイドの比率がそんなに急伸するとは思わない。
--- dカードプリペイドもApple Pay対応になるのか。
吉澤氏:何らかの対応ができるように検討を進めていく。
--- dポイントカードは昨年末にローンチキャンペーンを実施したが、dカードプリペイドが登場するタイミングでまた同様のキャンペーンを実施するのか。
吉澤氏:ご利用いただいているユーザーが順調に増えているので、これからもアピールしていきたい。特にポイントがお得に貯められることはもっと強調すべきポイントだと思っている。Apple Payの国内ローンチに合わせて一緒に押していく。
--- 10月に総務省からまたキャリア各社に対して端末購入補助の適正化に関連する厳重注意があった。これをどう受け止める。
吉澤氏:dポイントカードのユーザー還元に関連する指導と理解している。私たちとしてはサービスのことをユーザーの皆様に知っていただき、お得に利用していただくために実施したつもりだったが、総務省の指導を真摯に受け止めて内容を精査し、改善していきたい。
--- ガラケー向け新プランの狙いと意気込みは。現プランから1,000円の値下げになることによる業績への影響はないのか。
吉澤氏:ドコモのフィーチャーフォンをFOMAの契約でご利用いただく場合、現在はさまざまな料金プランがある。かけホーダイライトの1,200円というプランにも、料金の部分だけ見れば実は安くなる部分とそうでない部分もある。全体としてはパケット通信料金などを入れても有利に使ってもらえる価格を狙った。価格の両面性があるというところも含めて、当社の収支への影響は軽微とみている。ドコモをお使いのさまざまなお客様の声を聞いていると、フィーチャーフォンをこよなく愛する声も根強くあることがわかる。旧来のフィーチャーフォンから、LTEのフィーチャーフォンにシフトすることで、よりきれいなVoLTEの音声通話を使えるよさを実感してほしい。
--- セルラードローンについては今後の法制度改正の目処が立っているのか。
吉澤氏:ドコモとして実用化試験局の免許を取得して、まだ実証実験を行っている段階。目視外飛行などのルールについてはこれから制定される。現在は検討をしている段階。
山本 敦