ソニーモバイルのフラグシップスマホである、Xperiaシリーズの最新モデル「Xperia XZ」が、NTTドコモ、au、ソフトバンクの国内3キャリアからこの冬に登場することが決まった。発売はそれぞれ11月上旬の予定。
今夏に発売された「Xperia X Performance」の上位に位置づけられるモデルが半年も経たないうちに発表され、正直に言って筆者も驚いた。それぞれの端末にどんな違いがあるのか、よくわからないという方も多いだろう。
今回は改めてXperia XZの国内発売スケジュールが明確になったことを受けて、Xperia X Performanceとの比較レビューをお届けしたい。
■よりスリムに、シャープになったデザイン
春に「MWC 2016」(スペイン・バルセロナ)の会場でXperia X Performanceが発表された際、それまで日本国内では主力モデルとして活躍してきたXperia Zシリーズとデザインがけっこう変わったなという印象を受けた。2.5Dのラウンドエッジガラスを採用したメタルボディ。4隅コーナーにもカーブを付けた約5.0インチのディスプレイを搭載する、Xperia Z5よりもちょっと小ぶりなスマホは、片手持ちにもよく馴染むやさしいデザインだ。女性も持ちたくなる華やかな新色のローズゴールドとライムゴールドも鮮烈だった。案の定、国内での発売がアナウンスされた後は、筆者周囲のスマホに関心の高い女性の多くが「今度のXperiaはいいね!」と関心を寄せていた。
対して今度のXperia XZはまた少し男性っぽいクールでエッジの効いたデザインになった。フロントからリアへ、ラウンド形状のサイドフレームから一気につながるシームレスなループ形状がスリムでシャープな印象を与える。実際、Xperia X Performanceと並べてみると、本体の厚みはほとんど変わらないのに、手に持つとカチッと手のひらにフィットするような感触がある。
輝度の高いアルミ素材「ALKALEIDO」が採用されたことにより、バックパネルには色っぽい光沢感がある。今回借りた試作機はヒーローカラーの“フォレストブルー”だが、品のある落ち着いたブルーだ。フロントパネルのベゼルも同一色に合わせてある。画面を点灯したあとも、ベゼルの色がギラつかないので、動画コンテンツを視聴する際などは心地よい没入感が味わえそうだ。Zシリーズを愛用していた男性ファンにもウケそうな気がする。
なお、9月にグローバルモデルが発表された際には、カラーバリエーションのラインナップになかった“ディープピンク”が日本市場向けとして独自に加わった。こちらも上品な色合いのピンクなので、大人の女性を中心に人気を集めるだろう。
背面のカメラユニットはiPhone 7のような出っ張りのないフラットなデザイン。レンズの下にLEDライトのほか、新設された「レーザーAFセンサー」と「RGBC-IRセンサー」が配置されているところもXperia X Performanceとの違いになる。
■試してわかったカメラの実力差
Xperia XZがシリーズの新しいフラグシップである所以は、高度なカメラ機能を搭載したところにある。イメージセンサーの「Exmor RS for mobile」、広角24mmのGレンズ、画像処理エンジン「BIONZ for mobile」などソニー独自のデバイスや、デジタル一眼αシリーズの開発チームと共同開発により練り上げた画質などはXperia X Performanceシリーズとコンセプトを共有している。メイン側23MP、フロント側13.2MPというセンサーの有効画素数も一緒だが、従来からのCMOSイメージセンサーを含む2つの新しいセンサーを統合した「トリプルイメージセンシング技術」によりXperia XZの画質が大きく進化している。
2つの新しいセンサーの一つが「レーザーAFセンサー」だ。被写体に赤外線を飛ばして跳ね返ってくる時間を測定するディスタンスセンシング技術により、一段と正確な測距性能を実現。特に従来からのコントラストAFや位相差AFの技術だけではつかみづらかった、薄暗い場所での被写体との距離感が正確に把握できるようになったことで、暗所でのポートレート撮影時にも素速くピントが合わせられるのが気持ちいい。
もう一つの新しいセンサーである「RGBC-IRセンサー」は、従来から搭載するオートホワイトバランスの設定を行う際、追加で赤外線情報を取得して光源を特定し、より正確な色味調整をかけるというカラーセンシング技術の中核を成すデバイスだ。薄暗い屋外、蛍光灯・白熱灯など色んな光源下でより“見た目”に近い正確な色味を写真の中に再現できる。特にホワイトの自然さが一段とアップした。
■より充実したマニュアル撮影機能
Xperiaユーザーの中には、スマホのカメラなのにやたらマニュアル撮影機能が充実しているから、これを選んでいるという方もいるだろう。最新モデルのXperia XZではマニュアル撮影時にユーザーが任意に設定できる項目がまた増えた。Xperia X Performanceで設定できたISO感度、HDRのオン・オフ、シーン設定、ホワイトバランスと露出補正に加えて、13段階のシャッタースピード調整とマニュアルフォーカスに対応する。
シャッタースピードが調節できると、例えば夜景の撮影時にシャッタースピードを遅めに設定すると光源の軌跡を残す撮影が楽しめる。花火を火の粉が流れるような写真も撮れるのでおすすめだ。ただ、元もとフルオートの「プレミアムおまかせオート」でも夜景は十分に明るく、フォーカスも合わせて撮影ができるので、よっぽど暗い場所でなければシャッタースピードを調整しなくても、きれいな夜景が撮れるのがXperiaシリーズの特徴だ。
マニュアルでフォーカス合わせができると、例えば金網越しの被写体などがキレイに撮れる。本稿に作例を紹介しておくが、少年野球で活躍する我が子の姿をネット越しにフォーカスを合わせて撮りたい時などに便利だ。
■5軸手ブレ補正により動画撮影が安定した
新しい手ブレ補正機能の説明に移る前に、Xperia X Performanceでいったん省略された「4K動画撮影」がXperia XZで復活したことも伝えておこう。そのうえ4K、フルHD撮影の両方で、いっそう手ブレを抑えた安定感のある動画が撮れるようになったことが最新モデルの進化点だ。
これを可能にした技術が、ソニーのビデオカメラ“ハンディカム”シリーズのノウハウから生まれた「5軸手ブレ補正」機能だ。リアのメインカメラ、フロントカメラの両方で機能がはたらく。
従来モデルには「ヨーイング」(上下軸の回転)「ピッチング」(左右軸の横回転)と呼ばれる、ズーム撮影時に発生しがちな角度ブレの補正と、「ロールシェイク」と呼ばれる、歩きながらの流し撮りの際に起こる前後軸の回転ブレを補正する技術までが採用されていた。Xperia XZはこれに加えて縦横方向の「シフトシェイク」と呼ばれる平面方向ブレを抑える技術が乗った。実際には被写体に寄ったマクロ撮影時にブレを抑える効果が発揮されるらしい。Xperia X Performanceと撮り比べてみた動画を本稿に掲載するので参考にしてみてほしい。
【Xperia XZで撮影した動画】
【Xperia X Performanceで撮影した動画】
■2年使い続けてもヘタらないバッテリー
内蔵バッテリーの容量はXZが2,900mAh、X Performanceが2,570mAh。バッテリーパックそのものが少し大きくなっているので、恐らくデイリーでの持続感は若干ながら変わってくるものと思う。
これに加えて、Xperia X Performanceから搭載が始まった米Qnovo社のバッテリーマネージメント技術により、従来比で約2倍の電池長寿命が実現されている。ソフトウェア処理により実現したバッテリーのエネマネ機能は、常に電池のコンディションを把握しながら、充電時に最適な量を補うことでバッテリーセルの疲弊を和らげるというものだ。
Xperia XZでは、これに加えてさらにソニー独自開発の「いたわり充電」を搭載している。これは「スマホが朝起きた時にフル充電になっているように、寝る前に充電器につなぐ」というユーザーが多くいたことから実装されたという新しいインテリジェントなスマホのための機能だ。ユーザーの充電習慣をスマホが学習して、充電速度を調節しながらフル充電にもっていくアルゴリズムが内蔵されている。学習効果は本体設定から「いたわり充電」のメニューをオンにして、1週間から10日ほど同じ行動パターンに沿って寝る前に充電を行うと表れる。残念ながら、電池寿命が延びた実感は2年以上使わないと感じられるものではないようなので、今回のテストでは明らかにならなかったが、同じスマホを長く使うユーザーにとっては有り難く感じられるだろう。
■スマホ初心者にもおすすめできる、高機能スマホ
Xperia XZの高いデザインの質感、快適なハンドリング感は、ハイスペックなXperia Zシリーズを使い込んできた「Xperiaファン」の方々にはもちろん、Androidスマホは初めてという方、あるいはスマホそのものが入門者という方にもおすすめしたくなる。カメラにはソニーが誇るノウハウが惜しみなく詰め込まれているので、機能の説明ばかりを聞いていると、何だか小難しくて頭でっかちなスマホのように感じてしまうが、実のところは「プレミアムおまかせオート」に設定しておけば、今までのXperiaよりもさらに簡単に、一段ときれいな写真が撮れるようになったということだ。
そして、設定項目が豊富なマニュアル撮影についても難しく考えないでほしい。つまりこれまでのスマホでは、撮りたかった場面が思うように撮れなかったことで感じていたストレスから解放される所にメリットが表れるからだ。特にマニュアルでフォーカス位置を動かせる機能は写真の表現幅を広げてくれると思う。他社からはダブルレンズユニットを搭載して、撮影後にフォーカスポイントを設定できるスマホも発売されているが、筆者としては先にフォーカス位置を設定しから撮ったた方がより自然な写真が残せるし、結局のところ手間が少ないように思う。
指紋認証によるロック解除はXperia X Performanceと同様にとてもスピーディーで正確だ。新しいiPhone 7の指紋認証も精度は高いと感じるが、Xperia XZもこれと対等のレベルにある。ただ、指が水に濡れている時の認識精度はややiPhone 7の方が高いように思う。
そして、これは若干玄人志向な評価項目になるが、イヤホンジャックから出力して聴くサウンドの「音質」についてはXZの方がステップアップを遂げている。これは本体に内蔵するアナログオーディオ回路の見直しを図ったことによるもので、ハイレゾに限らずSpotifyやCDからリッピングして保存した音源を再生して楽しむ際にも効いてくる。よりいっそう肉付きが良く、各帯域の音が自然につながる艶やかなサウンドだ。Xperia XZが発売された折には、可能であればぜひ店頭でデモ音源を活用しながら、そのサウンドもチェックしてみてほしい。
協力:ソニーモバイル
山本 敦