ソニーモバイルが秋にグローバルモデルとしてリリースした約4.6インチのコンパクト機「Xperia X Compact」(SO-02J)が国内3大キャリアとしては唯一、NTTドコモで取り扱われることが決まった。発売は11月上旬。根強い人気を誇る“小さくて軽い、高機能スマホ”の実力を、約4.7インチのiPhone 7と比べながら検証してみた。
ドコモは2013年冬に発売した「Xperia Z1 f/SO-02F」以来、シリーズの歴代約4.6インチのコンパクト機を取り扱ってきたキャリアだ。今回のモデルは直近では昨年の秋冬モデルとして発売された「Xperia Z5 Compact」から1年を経て発売される、新星“Xperia Xシリーズ”の同型コンパクト機になる。
同機の立ち位置は少し複雑だ。これまで国内で発売されてきたXperiaシリーズのコンパクト機は、いずれも「フラグシップZシリーズのコンパクト機」に位置付けられ、例えばCPUの性能やカメラ機能、ハイレゾ再生などXperiaが誇る最強のエンターテインメント機能は、約5.2インチの兄貴分であるXperia Zをそのまま踏襲していた。
ところが、今回発売される「Xperia X Compact」は、Xシリーズのフラグシップである「XZ」をコンパクトにしたモデルではなく、国内では発売されていない「Xperia X」のコンパクト機という位置付けになる。XZとの差は画面サイズだけでなく、下位のCPUチップセットであるクアルコムのSnapdragon 650を搭載している点などに表れる。そしてLTEネットワークの下り最高通信速度はXZが500Mbpsであるのに対して、X Compactは262.5Mbpsである。
ただ、それ以外は今回のXZ、X Compact世代からまた大きく進化したカメラ機能であったり、ソニー独自の高精細な「トリルミナス ディスプレイ for mobile」を採用した点などは共通している。画面の解像度はX Compactが1280×720画素の“HDディスプレイ”だが、これまでのコンパクト機がそうであったように画面の粗さは一切感じさせず、明るく高精細で色調もナチュラル。動画配信サービスも快適に楽しめる。
内蔵カメラはメイン側のイメージセンサーの有効画素数が23MP。従来からのCMOSイメージセンサーに、AF精度を高める「レーザーAFセンサー」、色再現性を向上させる「RGBC-IRセンサー」を上位機のXZと同様に採用した。このあたりの効果については、先に掲載されているXperia XZの速報レビューをご覧いただきたい。フロント側のカメラは、XZの13.2MPに対して、X Compactは5.1MPと有効画素数のスペックが若干劣るが、片手持ちで軽快にセルフィが撮れるメリットはコンパクト機ならではと感じる。
■約4.7インチの「iPhone 7」と約4.6インチの「Xperia X Compact」
昨年はスマホの本体サイズの流行が5インチ超、果ては6インチに迫る“ファブレット”にシフトしつつあったが、今年は格安スマホがブレイクしたこともあり、やや落ち着いた感もある。特に夏に発売された「Xperia X Performance」は約5.0インチで、女性にも片手持ちで操作しやすいサイズ感を意識したことがヒットにつながった。そして4インチ台後半の人気のスマホと言えばアップルのiPhone 7だ。Xperia X CompactをiPhone 7と比べてみたときに、使いやすいスマホなのかいくつかのポイントを検証してみよう。
まずはサイズ感。画面のサイズは約0.1インチだけの違いだが、本体の外形寸法が大きく違う。X Compactのサイズが約65W×129H×9.5Dmm、質量は約135gであるのに対して、iPhone 7は約67.1W×138.3H×7.1Dmm、質量は約138gである。横幅はほぼ一緒だが、縦はiPhone 7の方が大幅に大きい。ボトムのベゼルの高さはほぼ一緒だが、トップのベゼル幅が高い。本体の厚みは圧倒的にiPhone 7の方が薄いので、X Compactの方がややずんぐりむっくりとした感じに見えるのだが、シェイクハンドスタイルで握って構えたときの、X Compactの収まり具合は非常に心地よい。iPhone 7も悪くないのだが、厚みがある分、X Compactの方がより安定するのだ。
指紋センサーの位置はiPhone 7がフロントボトムのホームボタン、X Compactが右側面の電源ボタンになる。X Compactは片手で握ったときに、中指で解除するとスムーズに操作できる。Xperia Z5世代の指紋センサーは誤作動が多く解除にもたつくことがあったが、Xperia X世代からiPhoneに負けないほど反応が良くなっている。
■気になるカメラ性能は?
カメラ機能については今回使用したXperia X Compactが試作機だったため、詳細な画質のチェックは行っていないが、もともとの明るく高精細な写真が撮れる高い基本性能に加え、設定できる項目が増えたマニュアル機能、正確な色味の再現と素速く正確なオートフォーカスなど、初心者から、スマホのカメラで割とこだわりを効かせた写真を撮りたい方にもおすすめできる出来映えだ。
本体がコンパクトで軽いので、ジャケットやコートのポケットからサッと取り出して写真が撮れる軽快さがいい。動画撮影はiPhone 7のように4K対応ではなくフルHDまでになるが、手ブレを抑えた安定した動画撮影が行えるのが特徴だ。
音楽再生についてはiPhone 7と大きな差がある。Xperia X Compactには従来通りのイヤホン端子があるから、使い慣れたイヤホンがそのまま挿せる。iPhone 7を買った方の中には、そろそろイヤホン端子がなくなったことのストレスをじんわりと感じはじめているという方もいるのではないだろうか。
しかもXperiaのコンパクト機は、Z3 Compactの世代からイヤホンジャックからのハイレゾ再生に対応している。ハイレゾは不要という方も、ソニー独自のアップコンバート技術である「DSEE HX」に対応しているので、CD音源やストリーミング再生の音源も“ハイレゾ相当”の高音質で楽しめる。中高域の艶やかさは、ボーカルの声質にフォーカスしたい楽曲やクラシック系の再生時に活きる。コンサートを収録したライブ音源をより立体的なサウンドで聴きたい時などにはX Compactが俄然実力を発揮する。
さらにXperiaシリーズにベストマッチするハイレゾイヤホン「MDR-NC750」を組み合わせれば、ハイレゾが楽しめるだけでなく、より静かな環境で音楽が聴けるデジタルノイズキャンセリング機能や、サラウンドのように立体的な録音が楽しめるバイノーラル録音にまで、Xperia X Compactで楽しむオーディオエクスペリエンスが広がる。iPhone 7の場合でもアプリや外付けアクセサリーを組み合わせればできてしまうことはあるが、Xperiaシリーズはより上質なオーディオ体験を、1台のスマホの中によりシンプルな形でまとめこんだ点が特徴と言える。
Xperia X Compactは、日本発売のモデルは本体が防水・防塵設計になっている。iPhone 7は防水対応にするためにイヤホン端子を取り払ったと言われているが、Xperia Z5 Compactから対応するUSB端子の“キャップレス防水”はX Compactにも継承されている。しかもイヤホン端子は健在だ。ただし、今回のモデルからUSB Type-C端子に切り替わっているので、一部外部アクセサリー機器などを買い直さなければならなくなるので注意したい。
カラーバリエーションはミストブルー/ホワイト/ユニバーサルブラックのほか、女性にも嬉しいソフトピンクが日本では発売される。今回は試作機だったため通信機能を試す機会がなかったが、ドコモ独自の機能である、電話の応答や発信など基本操作がより手早くできるようになる「スグ電」はコンパクト機ゆえにますます使いやすいかもしれない。
Xperia X Compactはデザインや多彩な機能のバランスが高いレベルで取れているスマートフォンだ。販売価格は新規、MNPの場合ともに2万円台半ば頃になりそうだ。ドコモでiPhone 7の32GBモデルを購入すると、“月々サポート”を利用した場合は26,000円前後、約4.0インチの「iPhone SE」の64GBモデルでは22,000円前後になるので、現行のiPhone小型機と並べてみてもよい対抗馬となりそうだ。
協力:ソニーモバイル
山本 敦