Motorolaのブランドを冠した、5.5インチのAndroidスマートフォン「Moto Z」「Moto Z Play」が10月に発売された。極薄のハイスペック端末で、背面に「カメラ」「プロジェクタ」「スピーカー」などを追加できるユニークな仕様となっており、いわゆる変わり種スマホとして発表当初から注目されているが、その使い勝手をお届けする。
■スマホを“拡張”する「Moto Mods」
次世代スマートフォンの登場か、それとも単なるキワモノで終わるか――。Motorolaの最新モデル「Moto Z」「Moto Z Play」は、ギーク層に向けたチャレンジングな製品となっている。最大の特徴は、マグネットで着脱するユニット「Moto Mods」(別売り)を自由に付け替えられる点。利用シーンに合わせて、機能を自由にカスタマイズする楽しさが味わえる。まずは簡単に、両端末のスペックと参考価格を紹介していこう。
Moto Zは、最薄部5.2mmの極薄ボディが特徴のハイスペック端末。約5.5インチのQHD(2,560×1,440ドット)有機ELディスプレイを搭載、CPUにはSnapdragon 820クアッドコアを採用。背面には1,300万画素カメラ、前面には500万画素カメラを搭載する。RAMは4GB、ROMは64GB、バッテリー容量は2,600mAh。「iPhone 7」と同様、3.5mmイヤホンジャックが廃止されているが、同梱の変換アダプタを利用すればType-C端子を経由してイヤホンが利用できる。サイズは153.3×75.3×5.19mm、質量は約136g。価格は91,810円(原稿執筆時の参考価格、税込、以下同)。
Moto Z PlayはMoto Zの廉価版という位置付け。約5.5インチのHD(1,920×1,080ドット)有機ELディスプレイを搭載、CPUにはSnapdragon 625オクタコアプロセッサを採用。背面には1,600万画素カメラ、前面には500万画素カメラを搭載する。RAMは3GB、ROMは32GB、バッテリー容量は3,510mAh。端末の下端に3.5mmイヤホンジャックを配置する。サイズは156.4×76.4×6.99mm、質量は約165g。価格は58,093円。
次にMoto Z、Moto Z Playに共通する機能を紹介する。ともにMoto Modsによる拡張が可能。OSはAndroid 6.0 Marshmallowを採用している。ホームボタンには指紋リーダーを搭載。カラバリはブラックとホワイトの2色で展開する。このほか、両端末とも3G/ LTEの同時待受が可能なデュアルSIMデュアルスタンバイに対応している。
■拡張してみた
ではMoto Z、Moto Z Playの肝となるMoto Modsには、どんな製品が用意されているのだろうか?外付けスピーカー「JBL SoundBoost」(12,744円)では、JBL社の重厚なスピーカーにより大音量で音楽を楽しめる。バッテリーの駆動時間も最大で10時間延長する。外付けプロジェクター「Moto Insta-Share Projector」(36,504円)では、最大70インチまで画像を投影できる。映画や写真、番組を複数人で見たいときなどに活用できそうだ。外付けカメラ「Hasselblad True Zoom」(31,104円)では、10倍光学ズームを利用可能。物理シャッターとズーム制御が利用でき、光量が少ない場所でも綺麗な写真を撮影できる。プレミアムカバー「Moto Style Shell」(2,138円~3,758円)は、天然木材や本革など高品質な素材を使用。TPOに合わせて交換できる。このほか、外付けバッテリー「Incipio offGRID Power Pack」(9,504円)も用意。バッテリーの駆動時間を最大で22時間も延長する。
そこで早速、外付けスピーカーJBL SoundBoostをMoto Zに装着してみた。同ユニットは本体より肉厚で重く、たしかに良い音が鳴ってくれそうだ。Moto Zの背中にはマグネットで装着する仕様。マグネットは強力で、一度くっつけると容易には外れない。装着直後、スマホのディスプレイにはスピーカーを認識したとのメッセージが表示された。ここで子ども時代の記憶がよみがえる。幼い頃、超合金のロボットでよく遊んだものだ。Moto Zをロボットの玩具に例えるなら、Moto Modsは手に持たせるバズーカ砲、盾、あるいは背中に背負わせる羽、といったところか。ワクワクせずにはいられない。いくつになっても男って、こうした分離・合体するギミックに弱い生き物なのかもしれない。
さて、肝心の音はいかに?音量はさすがに充分で、スマートフォン単体では到底出せないような迫力が出せる。部屋の中、ドライブ中の車内のほか、アウトドアでも好きな音楽を楽しめそうだ。音質はややこもりがち。ポータブルスピーカーの上位機種といったところで、低音の力強さが印象的だ。背面にはスマホを立てかけられるスタンドを出せる仕様。動画コンテンツの視聴がはかどるだろう。惜しいのは、背面に向けて音が出るという点。これは設計上、仕方のないことかもしれない。
帰宅途中に聞いていた音楽の続きを、帰宅後にも部屋で聞きたい。そんな毎日のように繰り返される利用シーンで、いちいちBluetoothで接続する面倒な作業が省けるのがうれしい。なおMoto Modsシリーズに関しては、今後も有名ブランドと提携するなどして開発が進められていくという。
■どんな人にオススメか
このSIMロックフリー端末Moto Z、Moto Z Playは、どんな人にオススメだろうか。残念ながら格安SIMサービスに、最優先で“安さ”を求めている人には、あまり薦められない。スマホ本体のみでMoto Z Playなら6万円弱、Moto Zなら9万円を超える。そのうえ、Moto Modsがそれなりの価格に設定されており、コスパという点では分が悪い。
2016年下半期に発売された端末を中心に、SIMロックフリー端末の人気商品をいくつか表にまとめてみた。このご時勢、メインカメラの1300万画素超えは当たり前で、指紋認証、デュアルSIMを搭載している機種も多い。それでいてASUS ZenFone 3なら42,780円、ZTE Blade V7Maxなら33,780円、Huawei P9 liteなら27,289円、プラスワン・マーケティング FREETEL SAMURAI REIなら21,197円と、破格に安い商品がいま続々と発売されている。単純にカタログスペックだけで判断するなら、Moto Z、Moto Z Playの強みは4K撮影に対応していること、特にMoto Zは画面の解像度が高い(2560×1440)ことが挙げられるが、価格を含めて考えると競争力には乏しい。
一方で、スマートフォンが好き、ガジェットも含めて好き、筋金入りのモトローラ好き、「惚れたスマホには金を惜しまない」といった層には、恐ろしく魅力的な製品になるだろう。Moto Zはまったく新しい発想の端末で、このシリーズでしか味わえないユーザー体験がある。今後、発売されるMoto Modsの新機能にも期待がもてる。爆発的に売れるモデルとは言い難いが、コアなファンには長く愛される、そんな製品になりそうだ。
協力:モトローラ・モビリティ・ジャパン
近藤謙太郎