今回は以前、RBB TODAYのニュースとしても紹介した耳に触れない"エアーフレーム"構造のヘッドホン「VIE SHAIR」をいち早く体験してみたのでご紹介しよう。
寒い冬はアウトドアだけでなく、インドアでも音楽を聴くときはヘッドホンを使いたくなるものだ。でもヘッドホンを装着した時の締め付けがつらい、閉塞感が苦手という方もいるだろう。「VIE SHAIR」はふだんヘッドホンは敬遠している方々にもオススメしたくなるほど快適な装着感を実現しているらしい。早速身に着けてみた。
同機の最大のポイントは「エアフレーム」と呼ばれるパーツだ。不思議な多角形のパーツをハウジングの内側に装着する。メガネのフレームにも使われているという樹脂素材で作られているパーツだが、なんとなくそれよりも柔軟性は高いように思う。強度はしっかりと確保されてそうだ。
本体には骨組みだけのオープン型フレームと、同じ形で面をパネルで囲ったようなクローズド型フレームの2種類が付いてくる。それぞれの役割は察しが付くように”音漏れ”を敢えてさせるか、それとも防ぐかの違いになる。本体からの着脱はマウントにカチッとひねって取り付けるだけ。とても簡単だ。
気になるフレームの装着感は、はじめに想像していたよりもずっと違和感がなかった。筆者は少し耳が大きいので、装着感はオープン型のフレームの方が柔らかくしなるので、装着時の痛みは感じにくかった。ヘッドホンの側圧も効果的に散らしてくれる。ヘッドホンの自重は270gと平均的だが、重さもそれほど感じない。通常のヘッドホンは、装着するとハウジングが耳とほぼ平行の向きにフィットするものだが、VIE SHAIRはハウジングの表側がやや前に傾くポジションで収まる。正面からでもハウジング側面のブランドロゴがやや見える独特のデザインだ。なおカラバリはブラックとホワイトの2色が発売される。
VIE SHAIRは有線・無線のどちらでも楽しめるヘッドホンだ。今回はまずスマホとBluetoothでペアリングして試してみる。本体に搭載するバッテリーは8時間の連続音楽再生に対応しているので、ちょっとした小旅行なら半日充電せずに音楽が楽しめそうだ。バッテリーは2時間でフル充電になる。普通のmicroUSBケーブルで充電するタイプなので、旅行の時に持ち歩く荷物は最小限で済みそう。
音質をチェックしてみると、ディティールの解像感が高く、各帯域の音がバランス良くきこえる。オープン型のフレームで聴くと、中高域の開放感が高く、ボーカルの透明感が引き立つ。低域をぐっと引き締めたいときにはオープン型のフレームに交換するといいだろう。特に音のチューニングについてはオーディオメーカーのヤマハと共同開発しているというから、このパフォーマンスには納得だ。
同機の心臓部であり、音を鳴らすために重要になる振動板と呼ばれるパーツは平面磁界駆動という珍しい方式で作られている。各帯域の音のつながりが自然でスムーズなのが平面磁界駆動方式の特徴だ。同機の場合はさらに振動板が58mmと大型なので、ゆったりと余裕のあるサウンドが鳴らせる。その点でも、例えばポータブルヘッドホンをすでに一台持っていたとしても、また違ったテイストの音が楽しめるヘッドホンとしてVIE SHAIRを手に入れるのもアリだと言える。
同機はオープン型のフレームを装着すると、音楽が“音漏れ”するし、外の音も飛び込んでくる。だからオープン型のフレームはアウトドアリスニング向きではないが、家の中で音楽を聴く場合は周囲の音にも注意が向けられるし、オフィスで仕事をしながら音楽を聴くときには周りから声をかけられても対応できるので、かえって都合がいい。もちろんボリュームを上げすぎると周りの人に迷惑をかけることもあるが、体験した感覚ではあまりボリュームを上げなくても静かな場所なら十分快適に音がきこえるので心配はあまりなさそうだ。
反対にアウトドアで楽しむ時には密閉型のフレームは必携アイテムだ。こちらを装着すれば音漏れは通常の密閉型ヘッドホンなみ。つまりほとんど漏れないので、こちらもボリュームに気をつければ電車の中などでも気軽に使えると思う。
今回テストした段階ではまだ、専用のスマホアプリが完成していなかったためVIE SHAIRの実力をスタンドアロンでしか試せていないが、完成版ではアプリと連動しながらイコライザーを使ってVIE SHAIRのサウンドを自在にカスタマイズしたり、同じVIE SHAIRどうしをWi-Fiでつないで、同じ音源をペアリスニングする機能なども使えるようになるそうだ。普通のヘッドホンとして考えると29,900円(税込)という価格は少し高いようにも感じられるが、スマホ連動で色んな機能が使えたり、将来的に追加されるのであればお得なようにも思う。
オーディオ・ビジュアルのテクノロジーは、IoTやモバイルに比べると既に確立していて大きな変化に乏しいようにも感じていたが、VIE SHAIRを体験すると、これからクラウドファンディングの仕組みを活かして、斬新なアイデアを武器にするスタートアップが次々と面白いプロダクトを形にしてくる期待感が高まった。
山本 敦