自然な会話調のボイスコマンドで話しかけて、クラウド経由で連携する家電機器やサービスを操作できるAIアシスタント搭載の新しいスマートスピーカーが、今年のIFAで様々なメーカーから発表された。各製品を振り返りながら、これからのスマート家電の進化を考えてみたい。
AIアシスタントといえばiPhoneやiPadに搭載されているSiriや、Androidスマホが搭載するGoogle Assistantが有名だと思う。スマートスピーカーとは、簡単に言えばGoogle AssitantやSiriのような人工知能を搭載するスピーカーのことと考えてもらっていいだろう。現在注目を集めるAIアシスタントにはもう一つ、アマゾンが開発したAlexa(アレクサ)もあるが、日本ではサービスが始まっていないので馴染みが薄いかもしれない。なおGoogle AssitantやSiriも含めて、AIアシスタントを搭載するスピーカーはまだ日本で発売されていないし、サービスを体験できる機会がない。
IFAにはAmazon Alexaのプロモーションブースも登場
だから「今年の年末にはスマートスピーカーがブレイクするかも」と言われても、いまひとつしっくりとこない方が多いのも当然だ。日本国内では年末ごろにグーグルが自社開発のスマートスピーカー「Google Home」の発売を予告しているので、恐らくその頃にはGoogle Assistantをスマートスピーカーで使うと何が便利になるのか、多くの方々がわが家で体験できるようになるだろう。アップルのSiriを搭載するスマートスピーカー「HomePod」は、残念ながら12月に最初に発売される地域の中に日本が含まれていないので、来年以降まで待つことになりそうだ。
ソニーが発表したGoogle Assistant搭載のスマートスピーカー
Amazon Alexaは日本上陸に関するアナウンスをしていないが、普通に考えればGoogle Assistantを搭載するスマートスピーカーに先を越されることを静観しているはずもないだろう。これは筆者の勝手な予想だが、おそらく今年の年末頃にはAlexa搭載のスマートスピーカーも仲良く同時期に日本上陸となるのではないだろうか。
スマートスピーカーは、基本的には音楽を聴くためのものだ。だからこそ日本を代表するオーディオ・ビジュアルのブランドであるソニーやパナソニック、オンキヨーが自社開発の製品をこのタイミングで発表して、音質へのこだわりをこめたスマートスピーカーをアピールできたことは大きな収穫につながるだろう。
パナソニックもGoogle Assistant搭載のスマートスピーカーを開発中だ
ただし、スマートスピーカーの真骨頂はホームネットワークを介してつながるスマート家電や、クラウドサービスとして提供される音楽配信やその他の便利機能を音声操作で快適に使えるようになる「スマート」な部分にもある。その点でGoogle HomeスピーカーやAlexaを搭載するAmazon Echo/Dotが先行して発売されているドイツで、IFAを皮切りにスマートスピーカーと連動する「家電とサービス」が続々と発表されたことは不思議ではないと言える。
ドイツを代表する家電機器のグローバルブランド、ボッシュにシーメンス、ミーレといった巨頭たちは、今年のIFAでAlexa搭載のAmazon Echoなどスマートスピーカーでボイスコントロールができる白物家電を、コンセプトモデルとしてではなく実際の商品としてブースに展示して、実際にサービスがどういう風に使えるようになるのかデモンストレーションをしてみせた。その様子はAlexaが上陸していない日本から足を運んだ筆者の目からだけでなく、IFAに集まった多くの来場者にも大きなインパクトがを与えたと思う。
インターネットやクラウドサービスにつながるボッシュの冷蔵庫
ミーレのハイエンドクラスのオーブンもAlexa対応に
スマートスピーカー自体は見た目にオーディオ用のワイヤレススピーカーとほぼ変わらないものが多いので、それ単体だと来場者が立ち止まって気にはしながらも、デモンストレーションに長居している様子もなかった。ところが冷蔵庫や洗濯機、オーブンなど日常の家電機器がスマートスピーカーでも動かせる様子を目の当たりにしたときの来場者の食いつきはやたらと良く、展示を説明するスタッフに様々な質問が投げかけられる。IFAの来場者はAIアシスタントとスマートスピーカーが、日常生活をどれぐらい便利に変えてくれるのかシビアに期待しているということが垣間見えた。
またスピーカーではない、AIアシスタントを搭載するデバイスもいくつかのブースで展示されている。元もとAmazonではAlexa対応の機器を開発するためのSDKを早めに、しかも比較的オープンに公開していたことが実を結んでいるのだろう。地元ベルリンのスタートアップであるSENICの、スマート照明と合体させたAlexa対応のボイスコントローラー「COVI」はデザインもスタイリッシュなので、来場者からひときわ注目を浴びていた。また日本からIFAに出展したCEREVOも、今年のCESで公開したロボット・デスクライト「LUMIGENT」にAlexa連携を加えたプロトタイプをブースでお披露目していた。
CEREVOはAlexaと連携するロボット・デスクライト「LUMIGENT」のプロトタイプを展示
Alexa搭載のスマートライトCOVI
Alexa、Google AssistantにSiriなどのAIアシスタントを搭載するスマートスピーカーは遅かれ早かれ、次はほぼ間違いなく日本にやってくる。その時に私たち使う側が、スマートスピーカーのような製品を使ってどんな時に何をしたいのか、より豊かになる生活を強く思い描くことが、連携する家電製品やサービスを生み出す原動力になると信じて次の進化に期待したいと思う。
山本 敦