トーンモバイルは15日、シニア向けのサービスを発表した。”特殊詐欺”などの社会問題をテクノロジーで解決する、意欲的な施策となっている。都内でおこなわれた記者説明会では、AI、NFCなどの技術を活用したユニークなデモも披露された。
■特殊詐欺は絶対に許せない
7月の記者説明会で「子どものスマホ利用問題」を解決するサービスを発表したばかりのトーンモバイルだが、今回の説明会では「シニアの特殊詐欺問題の撲滅」をテーマに掲げた。前回と同様、今回のサービスも同社が提供する新端末「TONE m17」で利用できる。登壇したトーンモバイル 代表取締役社長の石田宏樹氏は、その冒頭「長い間、携帯電話とインターネットに携わってきた者として、電話とネットを悪用した特殊詐欺は絶対に許せない」と語気を強めた。
トーンモバイル 代表取締役社長の石田宏樹氏
特殊詐欺について、石田氏は電話を利用する「振り込め詐欺」と、インターネットを利用する「それ以外の特殊詐欺」に分類する。そしてまず、詐欺の危険性が高い電話番号からの着信時に、「危険な可能性のある着信」「注意する必要のある着信」などとポップアップ表示させてユーザーに注意を喚起する「あんしん電話」について説明した。このサービス、どのように危険性を判断しているのか興味深いところだが、同氏によれば警察庁、提携会社、迷惑フィルタサービスなどを通じて『詐欺の疑いの強い電話番号』を収集して外部データベースに情報を蓄積、そのうえでTONEあんしんAIという人工知能が判断をしているという。
特殊詐欺について、電話を利用する「振り込め詐欺」と、インターネットを利用する「それ意外の特殊詐欺」に分類
詐欺電話の疑いをユーザーに注意する「あんしん電話」では、警察庁などから寄せられたデータを元に人工知能が判断する
ちなみに電話の主が番号を公表している事業者なら、着信時に企業名が表示されることもある。電話帳に登録していない番号からの着信には誰しも不安を抱くが、あんしん電話なら文字通り安心して電話にでることができそうだ。
詐欺電話を察知、ポップアップ表示で利用者に注意を喚起する
インターネットを利用する特殊詐欺には、フィッシングサイトなどの危険なサイトへの接続時に警告する「あんしんインターネット Lite」で対応する。こちらのサービスも、外部データベースに蓄積されたURLを元にTONEあんしんAIが判断する。あんしん電話、あんしんインターネット Lite、ともにサービスの利用料は無料。すべてのトーンモバイル利用者を対象に10月3日より提供を開始する。
危険なサイトにアクセスすると「ブロックされました」と表示され、閲覧できない仕組み
■シニア向けサービスも続々
このほか、シニア層の利用を想定したサービスも用意する。例えば「撮るだけ設定」では、ペンで必要事項にチェックした紙のマークシートを、TONE m17のカメラで撮影するだけで設定が完了する。これによりホーム画面のデザイン、スリープ時間の設定、着信音の選択などが設定できる。このサービスでもAIがチェック項目を認識し、自動で設定するという。10月18日より順次、アプリを配信する。
紙のマークシートをカメラで撮影するだけでスマホの設定が完了する、「撮るだけ設定」
また「お知らせシール」では、シールにTONE m17をかざすだけでアプリを起動させたり、連絡先を呼び出したり、メールや電話をしたり、といったことが可能になる。タネ明かしをすると、シールに埋め込まれたNFCチップをトリガーにしてTONE m17にアクションを起こさせている。よく使う機能などをプログラミングしておけば、スマホ操作に慣れていないシニア層の利便性も向上するだろう。シールは11月より販売を開始するという。
「お知らせシール」のデモ。シールにTONE m17をかざしたところ、電話帳の中の「中村さん」に電話がかかった
トーンモバイルでは、子ども世代が親世代にTONEの端末をプレゼントすることを「贈りスマホ」と表現している。この贈りスマホの際に利用したいのが、”見守って欲しいけれどプライバシーは守って欲しい”というシニアの気持ちに配慮した「ゆるやか見守りモード」。GPSを使って大体の位置は測定できるが、正確な居場所までは把握できない仕様となっている。文字通り、ゆるやかな見守りができるわけだ。10月3日より順次アプリを配信していく。
トーンモバイルでは「月たったの1,000円から親孝行ができます」として贈りスマホを訴求する。ギフト需要という切り口から、利用者の拡大をはかる考えだ。シニア層に向けたサービスも今後、さらに充実していくという。
見守られる安心感とプライバシーを守るニーズを両立させた、ゆるやか見守りモード
石田氏は、トーンモバイルの今後の見通しについて「このまま価格競争に陥れば、通信事業はレッドオーシャンになることは分かっている。そこでお子様、シニアといった家族に注目して、他の事業者とはまったく違う層を獲得していく。また、テクノロジーのない企業は勝っていけない。そこで特許がとても重要だと考えている」と話していた
近藤謙太郎