ビッグローブは28日、格安SIMサービス「BIGLOBEモバイル」において、「エンタメSIM」の提供を開始した。動画や音楽サービスの利用にかかるパケット通信量が使い放題になる「エンタメフリー・オプション」を簡単に申し込めるようになる。また、新TV CMにはタレントの染谷将太、池松壮亮、山本美月を起用。ブランドの再構築を目指していく構えだ。
■エンタメSIMの概要
都内で開催した発表会には、ビッグローブ 代表取締役社長の有泉健氏が登壇した。「エンタメSIM」は、音声通話SIM+データ通信(3GB、6GB、12GB、20GB、30GBから選択可能)がセットになったもの。YouTube/Google Play Music/Apple Music/AbemaTV/AWA/Amazon Music/Spotify/radiko.jp/U-NEXTといった特定の動画・音楽サービスを利用時に、データの読み込みに費やすパケットがカウントされなくなる。
音声通話SIM+データ通信のエンタメSIM。いまなら24ヵ月、月額1,980円で利用できる
これに加え、独自のトラフィック制御技術も用意した。これにより、ストレスなくストリーミング動画を視聴できるという。有泉社長は「速い、綺麗、止まらないといった品質を体感できる」と説明した。
トラフィック制御技術により、ストリーミング動画もストレスを感じないで視聴できるという
専用ページからBIGLOBEモバイルを申し込む際に、音声通話SIMと「エンタメフリー・オプション」が自動的に選択される仕様になっている。2018年2月4日までに申し込んだ場合、月額利用料は初月無料で、翌月から24ヵ月間は100円を値引く。例えば音声通話SIM+3GBプランであれば、月額1,980円(税別)から利用できる。
ビッグローブ 代表取締役社長の有泉健氏
■「SIM替え」とは?
発表会では、何度となく「SIM替え」というキーワードが繰り返された。同社では、いままで使ってきたスマートフォンを買い換えることなく、SIMを入れ替えるだけで使えることを「SIM替え」という言葉でアピールしていくようだ。この狙いについて、有泉社長は「スマホが高性能になったので、同じ端末を長期的に使う方が増えるという読みがある。今後はそちらにプロモーションの重きを置いていきたい」と説明した。なお、端末とのセット販売も継続はしていく予定だ。
BIGLOBEによる調査結果も紹介。「毎月3,000円安くなるなら、今使っているスマホのままSIM替えしたい」と回答した人が66.8%に上った
サポートも充実させる。対面、電話・Web・チャットでの相談や入会に対応、SIM端末保証サービスも用意している。今回のタイミングでコーポレートロゴも一新。冒頭に紹介した通り、新テレビCMも作成した。「Bでいこう」というキャッチフレーズとともにBIGLOBEモバイルを広く紹介していくという。
サポートも充実。対面、電話・Web・チャットでの相談や入会に対応、SIM端末保証サービスも用意した
有泉社長は「BIGLOBEモバイルでは今後、お客さまの体験価値を高めることに注力していく。エンタメSIMのほかにも、第2弾、第3弾とサービスを定期的に発表していきたい」と意欲をみせた。サービスの訴求、ロゴの一新、CMの放映で露出を増やす、こうした取り組みを行う背景には、ある危機感があるようだ。
コーポレートロゴも一新
BIGLOBEの固定回線200万契約超に対して、BIGLOBEモバイルは40万契約超(2016年現在)。利用者からは「BIGLOBEなら安心・安全に利用できる」という声が聞かれており、この点では有泉社長も「ブランド力のおかげと強く認識している」と評価するが、その一方で「この2年間、記者会見などを開催してこなかった。ブランドの認知度が下がっている」といった思いも強く抱くようになったとのこと。
それまでKDDIでソリューション事業を手がけてきた有泉氏が、BIGLOBEモバイルの社長に就任したのは今年1月のこと。「まずは自分たちのブランドを磨くことに集中し、競合他社との差別化を進める。料金の値下げ合戦ではなく、ユニークなサービスを通じてブランドの価値を認めてもらう」と説明した。
ご自宅訪問設定、全国スマホ教室なども提供していく
■BIGLOBEは赤字?KDDIの資金でやっているの?
有泉社長は質疑応答、囲み取材に対応した。
――サポートを充実させ、新CMも放送する。KDDIの傘下に入ったので資金が充実してきたのか?
「すべて私たちのコストでおこなう。BIGLOBEはかつて、圧倒的なプレゼンスがあった。しかしここ数年、活動を沈静化させてしまった。もう一度、ブランドをリブートさせたい。そのためには、お客様の懐に入り込むサポートをしていかないと。かつてBIGLOBEではPC教室もやっていた。そのポジションに戻していきたい」
――KDDIとのシナジーは?
「いまはKDDIにあって、BIGLOBEにない知識やノウハウを共有して取り込んでいるところ。まずはBIGLOBEのサービスを磨いて、色を出していく。まだKDDIとのシナジーを出すところまではいっていない」
――ターゲット層は?
「いまBIGLOBEは、40代から上の世代を中心に認知度が高い。でも最近、20代~30代にも認知が広がりつつある。エンタメオプションが影響しているのかも知れない。そうした若い世代もこれから獲得していく。若い方々にもBIGLOBEをフレッシュな目で見てもらえたら」
新CMに出演の3人がゲストで招かれた。山本美月は「よくメイク中にAbema TVで懐かしのアニメなどを流している」とコメント
――ブランドの再構築にかかる時間は?
「地道にやっていく。たやすくはない。今回のようなサービスをどんどん出していく」
――リアル店舗を出す予定は?
「ヨドバシカメラ、ビックカメラ、カメラのキタムラさんなどパートナーと広げていく計画。もともと、BIGLOBEでは自社のWebサイトに集客していた。それがブランドのカラーになっている。実店舗を出店するよりは、そうした仕組みによりWebに集客していきたい」
――楽天に買収が発表されたフリーテルは、契約者数が約40万台だった。BIGLOBEとほぼ同等。フリーテルの決算は赤字だったが、BIGLOBEは?
「早くブレークイーブン(損益分岐点)の状態に持っていきたい。光回線、法人などは黒字になっている。残りはMVNOだけで、ここだけ黒にいっていない。それを黒転させるのが私のミッション。厳しいのはどこの業者も同じ」
――過去に1回もブレークイーブンに達していない?
「おそらく、到達している業者さんはいないんじゃないか。肌感で申し上げれば、3桁の契約者さんがいなければ、いまの料金体系では難しい。自分の中では、2020年くらいには(何とか黒字にしたい)、という目標を持っている」
――iPhoneの取り扱いは?
「まったく、そういう話は何も決まっていない。あれだけの端末なので魅力はありますが」
近藤謙太郎