最近は北米ではゲーミングパソコンがブームになってきているという。そういえば、ギークが主人公の海外ドラマ「ビッグバンセオリー」などを見ていても、ゲーミングノートパソコンがよく登場している。
ゲーミングPCは高性能なプロセッサやビデオカードを搭載するため、発熱が大きくなる。デスクトップパソコンであれば冷却ファンを大型化したり、ケースを大きくしたりなどで対応できるし、持ち歩きは考えなくてもいいので、(極端に高性能を求めなければ)あまり問題はないのだが、ノートパソコンで高性能なものには難点がある。
■大きく持ち運びにくいゲームノートPC
それはノートパソコンの限られたスペースのボディでは大きな発熱を処理するのが難しく、ボディが大きく、重くなってしまうことだ。そのため、ディスプレイの大きなゲーミングノートパソコンは、一般的なユーザーには持ち歩きが難しいほど重い。
代表的なゲーミングPCとして、DELLのAlienWareがあるが、13インチディスプレイタイプで2.6キロ、15インチタイプで3.49キロにもなる。15インチモデルは普通のユーザーなら持ち歩く気が失せるだろう。13インチはなんとかギリギリ持ち運べる程度だろうか?前述のビッグバンセオリーでも出演者が持ち歩いているのは13インチ程度のように見える。しかし、アメリカ人は日本人よりもパワーがあるので、我々よりは軽々と持ち運べることだろう。
Dellの製品ページ(http://www.dell.com/jp/p/alienware-13-laptop/pd)で見ると、13インチのAlienwareが搭載できるGPUはNVIDIA GeForce GTX 1060 (6GB)がマックスのようだ。15インチモデルがNVIDIA GeForce GTX 1070 (8GB)を搭載できるのに対して、スペックダウンしている。発熱の処理が難しいためだろう。
かと言って、1070を搭載できる15インチモデルは3.49キロとヘビーだ。つまり、“高性能”で“持ち運べる”ゲーミングノートPCというのはたとえ高い金を積んでも買うことができないものだったのだ。
■常識を破壊したMax-Qデザイン
しかし、これでは一層のゲーミングノートPCの発展は望めない。そこにNVIDIAが1つの解決案を示してきたのだ。それが「NVIDIA Max-Qデザイン」だ。
ゲーミングPCを変えるMax-Qデザイン
Max-QというのはそもそもNASAがロケットを打ち上げるときの大気圏飛行で、“G”が最大になるポイントのことだという。NASAは実際にロケットを設計するときに、このMax-Qを計算に入れているそうだ。
このMax-QのフィロソフィーをNVIDIAはゲーミングノートの設計に応用し、従来の3分の1の厚さ、最大3倍のパフォーマンスを持った製品をOEMが作れるようにした。このガイドラインに基づけば、18ミリとMacBook Air並み(17ミリ)の厚さで、従来の最大70パーセント速いゲーミングノートPCを作れるという。
なんとも素晴らしい話だが、そんなことが現実に可能なのだろうか?
■奇跡を感じるスリムボディ「ROG ZEPHYRUS GX501」
そして、実際に日本国内で販売されたMax-QデザインのファーストモデルがASUSの「ROG ZEPHYRUS GX501」だ。
このモデルのサイズは「幅379mm×奥行262mm×高さ16.9~17.9mm」になる。実際にその厚さは18ミリを切っている。
搭載するGPUはGTX1070でプロセッサはCorei7 7700HQなので、前述のAlienwareの15インチ並。Alienwareが3.49キロであるのに対して、2.2キロと極めて軽量になっているのがわかる。2.2キロという重量は持ち運んで使うことも十分に可能な重量だ。
ゲーミングPCとは思えないスマートなボディ
一般的なノートPCより薄いボディ
■スーパークールなボディ
そんな薄型ボディで十分な冷却ができるのか?と思ってしまうが、実際に使ってみると特にボディが熱くなるような状況はないようだ。
キーボード周りなどは熱を持つ様子がなく、キーストロークも深く、キータッチもよく十分に仕事に使える印象。実に2000万回の寿命を持つという。また、ゲーミングパソコンだけあってライトアップ機能も搭載し、ROG AURAというユーティリティソフトで自由に色を設定できる。
好きな色でライトアップできる。循環カラーを使うこともできる
このキーボードが熱を持たないのはその独特のレイアウトも関係しているのかも知れない。キーボードはボディ下部にレイアウトされているのだが、上部には何もなく空きスペースになっている。プロセッサなどの熱を持つパーツは上部にレイアウトされていて、キーボードには熱が伝わりにくくなっているのだろう。
このキーボードレイアウトだけでなく、ボディデザインも冷却を考慮したものになっている。ディスプレイを開くと底面も開き、エアーアウトフローが拡大し、従来機よりも約20%エアフロースペースを拡大した。それにより、システムエアフローが32%拡大し、システム温度は約20%低下しているという。
ディスプレイを開いたとき、底部がせりあがりエアフローを拡大するのだが、赤い色でライトアップされる
電源に接続していないとライトアップされない(バッテリ消費を抑えるためだろう)。背面底部が開いているのがわかる
閉じてライトアップしていない状態
■VRレディな拡張性
4つのUSBポートとHDMIポートを搭載し、VRレディな仕様になっている。また、USB-Cポートも搭載しているのが便利だ。
豊富な拡張端子を備える
NVIDIAのMax-Qデザインは従来、持ち歩くことが難しかったハイパフォーマンスなノートPCの持ち運びを可能にした。また、VRシステムを使うこともできるので、VR環境を持ち運びたい人にも役に立つことだろう。
Max-Qデザインはパソコンの使い方を変える1つのターニングポイントとなる可能性があると思うし、その日本で登場した第1号であるASUS「ROG ZEPHYRUS GX501 」はまさにレボリューショナルなPCだ。
ちなみに価格はASUSオンラインショップで29万1384円(税込)。このパフォーマンスを考えれば高くはない価格だろう。
※人間を電池にするMATRIXテクノロジーが世界を変える?「Power Watch」
一条 真人