IoTという言葉が広く一般に浸透する中で、家のIoT、いわゆる「スマートホーム」という言葉を耳にする機会も増えてきた。家電や電子機器がネットワークにつながることで、スマホ等を通じて一元管理できたり、外出先からも操作できたり、使用状況が見える化できたり、といったことができるようになる。また、最近では「Amazon Echo」をはじめとした「スマートスピーカー」が登場してきた。音声を通じてさまざまな指示を出すことができる「スマートスピーカー」は、その先の家電にもつながっていくことで「スマートホーム」とセットで語られることも多い。
しかし、「スマートホーム」や「スマートスピーカー」の機能、メリットについて、いまひとつ“自分ごと化”できない人も多いだろう。「その機能は本当に必要?」と首を傾げたくなるものもあれば、「利用シーンに登場する人物設定がいつもワンパターンで自分は関係ない」と思ってしまうことも。そこで今回は、デジタルを愛してやまない5名の女性ジャーナリスト(デジージョ)に集まってもらい、自分が考える理想のスマートホームについて、思うままに語り合ってもらった。参加してくれたデジージョは、太田百合子氏、すずまり氏、富永彩乃氏、房野麻子氏、綿谷禎子氏の5名。座談会は太田氏と綿谷氏の事務所でおこなわれた。
以下、その内容をお届けしたい。
※後編はこちら※
■スマートスピーカーは使える?
【太田】:今回の企画はすずまりさん発信ですよね。どういった趣旨なのか改めて説明してもらえますか?
【すずまり】:発表会なんかで説明される「スマートホームで実現する幸せな未来」があまりにもワンパターンなのがずっと気になっていて……。優しいお母さんと子どもがキッチンで一緒に料理をしているシチュエーションで、音声でレシピを呼び出すと便利とか、タイマーとか、それだけ?と思ってしまって。それって、そこにいる子どもに手伝ってもらえばいいだけじゃん、みたいな。「外出先からエアコンを調節しましょう」とかもよく言われるけど、本当にやるかな?と思ったり。今ひとつピンとこないので、ここはひとつ、みんなで理想のスマートホーム・スマートスピーカーについて話してみると面白いかなと思って。
家族の誰もが手軽に体験できるIoTサービスを目指して発表された「au HOME」だが…
【太田】:なるほど。ちなみに、「スマートスピーカー」はみんな使ってますか?
【すずまり】:使っているけど、まだ家電にはつなげていないですね。
【太田】:うちの事務所には今「Amazon Echo」「Google Home」「Clova WAVE」の3台揃ってます。照明は「Philips Hue(ヒュー)」を使ってスピーカーとつなげていて、これが意外と便利。たとえばご飯を食べるときに食事をする部屋まで移動するのですが、お盆を持っていて両手がふさがっているので、音声で照明が消せるのはラク。これまでは面倒なので使っていない間もずっと電気を付けっ放しにしていたりして、すぐに電球が切れてしまってました。
ちなみに、HueにはGoogle HomeとAmazon Echoの両方をつなげていますが、Amazon Echoは“ライト”と言うと通じても“電気”だとわかってもらえなかったり、細かい違いがありますね。
それと、事務所の2階のエアコンを下から操作できるようにしています。この事務所はすごく寒いので、移動前にあらかじめエアコンを入れておけるのは便利です。
「Amazon Echo」(中央)、「Clova WAVE」(右)、「Google Home」(左)
【房野】:日本人にとっては声で操作することへの抵抗があるとよく言うけど、慣れちゃうとあまり気にならないですよね。
【太田】:家の中だと気にならないですね。
【富永】:この間、7歳の男の子が普通に話しかけてました。子どもは特に順応が早い。
【太田】:我々の世代ってキーボードとマウスだけど、最近の世代だとフリックの方が速いという人もいるし、その下の世代は喋った方が速いってなるんじゃないかと思います。実際使ってみるとすごく便利に感じます。みなさん、スマートスピーカーでどんな機能をよく使いますか?
【すずまり】:タイマーはすごく使う。今日も、ローストビーフを作るときにジャーで低温調理するんだけど、材料を突っ込んで、「Ok Google 1時間後にタイマーかけて」という感じで使いました。
【房野】:タイマーは重ねて複数使えて便利だよね。料理の場合、複数のお鍋を火にかけたりするので。
【綿谷】:わたしは出かける前に、「ここから何分?」とGoogle Homeに聞きます。Googleはやはりその辺が優秀で、一番早い行き方を提案してくれる。あとは、家のことをやりながら声で操作できるのはラクチン。たまに、「わかりません」と言われてきー!っとなりますけど。
【すずまり】:単に音声アシスタントというだけだと、それこそスマホでいいじゃんと思ってしまうけど、スマホだと画面ロック中は呼びかけに反応しない端末があったり、音声の聞き取り精度がよくないと思うことはありますね。据え置きのスマートスピーカーならではの感度の高さは確かにあると思う。スマホだと音楽を流している時は聞き取ってくれなかったりするし。それと、スマートスピーカーではないけど、「Siri」の場合、Apple Watchを使えば振動で教えてもらえる。たとえば夜中にアラームが鳴っちゃうと困る場合なんかは便利です。
【富永】:たとえば、「たまご半熟で」というとその時間でやってくれないんですかね?沸騰してから7分がちょうどいいとか、判断してくれると使いやすい。
【房野】:それくらいになると使いやすいよね。わたしは今あまり音声アシスタントを使っていなくて、音楽再生と天気予報くらいかな。家がそんなに広くないので、リモコンもなくならないし。
中央奥から時計回りに、すずまり氏、富永氏、太田氏、綿谷氏、房野氏
【富永】:あの、スマホを探してくれるやつやってみたいんですけど!
【太田】:やってみましょうか?どれに繋がってるんだろう、端末がいっぱいあるから……。「OK Google、スマホを探して」
【Google Home】:「複数のAndroidスマートフォンと繋がっています。鳴らしましょうか?」
【太田】:「鳴らして」
※:1台のスマートフォンからアラーム音が鳴る。マナーモードにしていたが、強制的に鳴った模様。
【すずまり】:音が強制的に鳴るのはいいですね。他人でも大丈夫なの?
【太田】:一応、Google Homeは声を認識してくれて、6人まで聞き分けられるはず。たまに間違うこともあるけど……。
【すずまり】:私がやるとどうなるんだろう?「OK Google、今日の予定を教えて」
【Google Home】:「今日の予定は、、、です」
【全員】:言っちゃった!!(笑)
【太田】:私と綿谷さんを間違えることもよくあるんです。
【綿谷】:でも、最初に比べると認識率があがってきました。
【房野】:だいぶデータが溜まってきたんですね。
■家電とどれだけつながるかが鍵になる
【太田】:話を戻すと、スマートスピーカー、スマートホームが便利になるかどうかは、やっぱり家電とどれだけつながるのかという部分が大きいかなと思います。
【すずまり】:家電メーカーは、そういう準備というか、心づもりをしている気がする。できればひとつでも多くのものとつながるようにしたいという。
【太田】:2017年のCESで、Alexaにつながる製品がすでに700くらい出ていた。たとえば中に入っているものを認識する冷蔵庫があって、今あるもので作れるレシピなんかを教えてくれたり。車と連動しているものもすごく多くて、車で作業していたものを家に引き継げたり。あと、アメリカのEchoは電話が掛けられるんだけど、それはすごく便利だと思いました。日本だと、Clova WAVEがLINE電話をかけられるようになったので、キラーコンテンツになるかもと思ってます。
【すずまり】:電話は、ナンバーで認識?
【太田】:いわゆるIP電話で、LINEアカウント同士で電話するかたち。あらかじめClovaアプリで相手を設定しておく必要があると思います。
【房野】:個人的には、電話をスピーカーフォンで聞きたくないかな。車の中とかならいいですが。
【太田】:私は一人のときならいいかなって。そもそもスマホって、電話に向いてないんですよね!肩に挟めないし。
【綿谷】:確かに、電話しながらメモを取りづらいし、不便。ハンズフリーだとそういうときに便利ですよね。
【富永】:カスタマーセンターに電話するときとか、すごく待たされるじゃないですか。スマホを持ったままじゃなくていいのは嬉しいです。
【全員】:確かに。
【太田】:ラジオ・オーディオ・赤外線リモコン・電話、そういった元々家にあるものがスマートスピーカーに置き換わってはきている。色々なものが繋がっていく素養はできているのかなと。外から遠隔操作みたいなものは、安全性の問題も気になるし、まだどうなるかわからないですね。
ちなみに事務所のエアコンは、Nature Remoという赤外線のスイッチハブみたいなものと、IFTTTというアプリを使って操作しています。IFTTTは、何かをトリガーにして何かをするという設定をして複数のWebサービスを連携できるアプリ。Google HomeもAlexaも対応していて、トリガーとして「言葉」を自分で設定できる。たとえばGoogle Homeにつぶやくと、その内容がTwitterでもつぶやかれる、といった連携も作れたりします。
【すずまり】:一般の人にはハードルが高そう……。
【富永】:私も使っているんですが、おすすめのプログラミングがいくつか用意されていたりして、そんなに難しくないんですよ。
【太田】:朝、時間になったらライトを点けるというのもできます。さらに今後は、そのライトがついたらコーヒーが入るというような連携も可能になるはず。今だと、スマートロック・ロボット掃除機・照明・監視カメラ系、赤外線で動くなんらかのものはすべて操作できるので、色々カスタムして連動させると面白いです。
【すずまり】:Apple Watchとか活動量計だと、心拍というかセンサーあるから、起床そのものをトリガーにして何かできそう。
【太田】:以前展示会で見たことがあるのは、歩数をトリガーにして、一万歩を越えると家に帰ったときにライトがキラキラ光ってお祝いしてくれるというもの。(笑)
【全員】:(笑)
【すずまり】:それはいいですね!目標超えないと家に入れないとか。痩せそう!
【太田】:そういうのも、デフォルトでそうなってると困っちゃうけど、自分でカスタムできるなら自己責任だしいいかなと。
【すずまり】:今はクラウドに心拍とか体重とかのデータも上げてしまっているし、それを記録した瞬間に、体重のアップを感知されて、冷蔵庫から献立を指定されるとか。アイスは取り出せなくなるとか。(笑)
※後編に続く※
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