デジタルイメージングの画像編集ソフト、画像処理エンジンを開発するフランスのDxOは近年、デジタルカメラやスマホなどモバイル端末のカメラに搭載されているイメージセンサーの格付け評価を実施。その結果としてサイト「DxOMark」に公開しているスコア評価が、いまや大手メーカーが気にかけるほどに存在感を強めている。
そのDxOがスマホのデジタル端子に接続できるコンパクトなカメラユニット「DxO ONE」を商品化した。先行してLightning端子を搭載するiOSデバイス対応機から発売され、今はUSB Type-Cコネクターを搭載するAndroid対応モデルにも展開を広げつつある。なおiOS版のモデルが対応する機器はiPad Pro、iPad Air、iPad mini(第2~第4世代)、iPad(第4~第5世代)、iPhone 5~iPhone X。iOSの条件は10.1以上になる。
iPhoneにLightning直結が可能な外付けカメラ「DxO One」
iOS版のモデルについては日本国内で下記のWebショップが並行輸入品として取り扱っている。価格は83,500円(税込)。
<ふもっふのおみせ>
https://www.fumo-shop.com/
今回はiOS対応モデルの「DxO One」を試用する機会を得た。もともとiPhone自体が優れたカメラ機能をうたうスマホなのに、それでもDxO Oneを使う意味はあるのか、iPhone 7のカメラと画質を比べながら使ってみた。
iPhone 7につないで使ってみる
接続するとこのような見栄えになる
DxO Oneは最大辺が6.75cm、厚みは約2.6cm、質量は約108gというポケットサイズ。1インチの大型CMOSセンサーは解像度が20.2MP。1インチといえばソニーのRXシリーズなど高級コンデジにも採用が増えていて、解像感や階調表現力の高さ、低ノイズなど高い画質には定評がある。最大絞りF1.8、35mm判換算で32mmの固定焦点レンズを搭載。光学ズーム機能は持たないが、最大3倍までのデジタルズームに対応する。静止画はJPEGまたはRAW、動画はMOV形式で記録する。
レンズカバーを開けると側面からLightning端子がポップアップする。iPhoneに接続して専用アプリ「DxO One」を起動するとiPhoneの画面がビューファインダーになる仕組み。カメラの本体にmicroSDカードを1枚記憶媒体として装着ができて、背面のタッチパネル付ドット液晶のモニターで大まかに構図が決められる。天面にシャッターボタンもあるので、実はDxO One単体でも撮影はできる。USB充電のバッテリーを内蔵する。
レンズカバーを開けるとLightning端子がポップアップする
背面にタッチ操作に対応するモノクロLEDとSDカードスロット、USB端子を搭載
天面にシャッターボタンがある
カメラ機材としてはiPhoneと2台持ちになるが、本体がとてもコンパクトなうえ、専用アクセサリーとして発売されているキャリングポーチに入れて本体を保護しながら旅先にも気軽に持ち歩ける。今回は年初にアメリカで開催されたCESを訪れる機会にアメリカ旅行に持参してみたが、バッグのスペースをほとんど取らないので余計な煩わしさは感じなかった。
画質についてはJPEGで撮影した静止画をiPhone 7のカメラと比べてみた。iPhone 7も暗い場所での撮影は得意としているが、DxO Oneの方が暗部の情報量は豊かだ。全体の色合いがややあっさりとした印象にはなるが、暗いところの色彩の階調感も自然に出せるし輪郭の精彩感も高い。明部の白トビもよく抑えている。
DxO Oneでラスベガスの夜景を撮影。暗部のつぶれが少なく、自然な階調感が出せている。目で見るよりもずっと明るく色鮮やかな写真が記録できる
同じ風景をiPhone 7で撮影
コンパクトデジカメにありがちなレンズの樽形歪みも少ない。イベント会場に出展されていたワイヤレススピーカーを撮影してみたところ、DxO Oneの方が実物の縦横比に近いイメージが記録できた。iPhoneの写真は木目の質感が良く出ているが、すこし横幅が狭く、タテがおおきくなって太ったように見えてしまう。DxO One単体では遠くにある被写体へのズーム撮影は苦手だが、近づくことのできる被写体を撮るぶんには十分に仕事用途にも使えそうな手応えを得た。
DxO Oneでワイヤレススピーカーを撮影。縦横比が実物により近い
同じ風景をiPhone 7で撮影
シャッターを切ってからデータを記録するまでのインターバルは十分にストレスを感じさせない速さだ。カメラを構えたポジションから、左下側の位置に来るアプリのシャッターアイコンをタップしてもいいし、右側の本体ボタンでシャッターを切ることもできる。
静止画・動画の撮影はアプリのアイコンから素速く切り替えられる。動画の最大画質は1080p/30fpsまで設定が可能。フォーカスはマニュアルとオートが選べるが、オートフォーカスは合焦がiPhoneに比べるとやや遅く感じられた。静止画撮影時には使える3倍電子ズームが動画撮影の際には無効になる。電子手ブレ補正が搭載されているが、何より本体とiPhoneを両手で構えることになるので撮影時の手もとが安定してブレを少なく抑えられる。
アプリを立ち上げて、スマホの画面で詳細を設定。ビューファインダーにもなる
iPhoneとの間をWi-Fiで直接つないで、iPhoneをリモートビューワーにして撮影できる機能が便利だ。撮った写真はiPhoneの通信機能とアプリを使ってSNSでシェアしたり、メールやメッセージに添付して送れる。ソフトウェアのアップデートにより、Facebookライブでの配信とタイムラプスビデオの撮影機能も追加された。
iPhoneとカメラの間をWi-Fiで直接つなぐこともできる
バッテリーのスタミナは静止画200枚の撮影に対応していると目安が示されている。実際にはカメラを起動したまま持ち歩いているとバッテリーが徐々に消耗されてしまうので、毎度写真を撮るたびに本体とアプリを起動する必要がある。本体のモノクロ液晶にバッテリー残量が表示されるが、ゲージに1ケタ台がなくいきなり10%ずつ表示が減るので感覚的にも残量を気に留めておく必要がある。
iPhone 7はiOS11から写真ファイルをHEIF形式で記録して、内蔵ストレージに高効率よく保存できるようになったとはいえ、DxO Oneがあればカメラ側のSDカードにのみファイルを記録する設定も選べるので、内蔵ストレージが小さめのiPhoneでもより気軽に高画質な動画・静止画撮影が楽しめるのがうれしい。
データの記録先は本体に装着したmicroSDカードのみか、iPhoneへの同時記録も選べる
DxO Oneに対応するアウトドアシェルや予備バッテリーパック、チルトスタンドなどアクセサリーも豊富に揃っているので、本機を活用しながら撮影を楽しめるシーンも広がる。コンデジを新たに購入することに比べると少し割高なガジェットという感じもするが、1インチセンサーの高品位な画質は魅力。もし機種変更した古いiPhoneが眠っていれば、本機に組み合わせてもう一度高機能コンデジとして活躍の機会を与えることもできる。日本での正式発売を心待ちにしたい。
DxO Oneでハンバーガーを撮影。iPhoneに比べると色のりがややあっさりとしている
iPhone 7で撮影したハンバーガー。ディティールが上手に引き出せている
山本 敦