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NECが最新ホームルータ発売!今さら聞けないルータ選びのポイントを詳細解説

2018-10-15 12:16:38
 Wi-Fiアライアンスが、次の新しい規格を「Wi-Fi6」とすると発表した。これまで11acだの11nだのわかりにくい表記を数字にしてどれが最新かをわかりやすくするものだ。新しい規格名は理論最大伝送速度9.6GbpsとなるIEEE 802.11axにつけられる。同時に11acをWi-Fi 5、11nをWi-Fi 4という表記に正式に改める。

 要はこれからは「acとnはどっちが速いのか?」と悩まずとも数字が大きいほど新しいバージョン(=だいたい伝送速度も上がっている)だとわかる。基本的にはありがたいことだ。

 しかし、Wi-Fiの機能や性能は伝送速度だけで決まるものではない。実際のスループット、電波強度、ビームフォーミングやMIMO、簡単自動設定、ひいては接続する端末側との相性の問題もある。折しもNECが4日Wi-Fiホームルータの新製品を発表した。このスペックを例にホームルータを選ぶときのポイントをいくつか整理してみたい。

 なお4日に発表された「Aterm WG1800HP4」「Aterm WG1200HS3」はAtermシリーズの中では中位の標準モデルとなる。現在、Wi-Fiルータで上位機種となるものは802.11ac(今後はWi-Fi 5)、4×4MIMO対応、最大伝送速度1.7Gbps前後というスペックになる。1800HP4は3×4MIMOで1.3Gbps、1200HS3は2×2MIMOで867Mbpだ。

 一般的なスペックだが、家庭用のWi-Fiルータを選ぶ場合、むしろ指標としてはちょうどよい。

 以下は、「Aterm WG1800HP4」のサイトに掲載されている特徴である

・11ac&3ストリーム(3×4)対応、1300MbpsのギガスピードWi-Fi
・IPv6※通信対応!さらにNEC独自の【IPv6 High Speed】機能搭載で高速通信
・ビームフォーミング搭載
・WAN/LAN(複数ポート)有線フルギガ対応
・「ハイパワーシステム」により電波が遠くまで届く広範囲通信を実現
・接続中の端末を見える化して管理する【見えて安心ネット】
・子どもを守る安心機能【こども安心ネットタイマー】
・セキュリティに配慮した安心設計
・買い替え前のルータから設定を引き継ぐ【Wi-Fi設定引越し】
・Wi-Fiかんたん設定
・「Aterm スマートリモコン」でスマホからダイレクト設定
・最適かつ快適な中継接続【Wi-Fiデュアルバンド中継機能】
・「横置き・壁かけ」もOKのスマートデザイン
・5GHz帯、2.5GHz帯の2つの通信帯域で快適ホームネットワークを実現

このなかから、よく見かける言葉を中心に説明してみよう。


●MIMOの掛け算表記の意味

 2×2、4×4といった表示をWi-Fiルータでも見かける。もちろん角材の寸法だったり自動車の駆動方式ではない。これらの数字に加えてMIMOという表示も見かける。数字が大きいほど速度が速いというイメージは間違ってはいない。専門家は怒るかもしれないが「4×4と8×8なら8のほうが速い日がいない」という理解は正しい。

 ただ、この説明だとMIMOで表示される「掛け算」の意味がわからない。これは掛け算ではなく、送信、受信のためのアンテナ(厳密には伝送路)の数と思えばよい。そもそもMIMOは伝送速度を上げるための技術。通常の無線通信はアンテナ1本で通信するが、MIMOでは、複数のアンテナを使うことで伝送速度を上げようというものだ。掛け算の形になっているのは送信側と受信側のアンテナの数を表していると思えばよい。

 4×4なら送受信で4本のアンテナ(伝送路)を持っているということだ。1800HP4の3×4MIMOは送信側のアンテナが3本(3ストリームともいう)で受信側のアンテナが4本という意味になる。受信側のアンテナはスマホ(接続デバイス)の台数と思えばよい。

 アンテナの数と通信できるスマホの台数が同じというわけではない(伝送路は複数の端末が共有できる)が、ストリーム数は、家で使うスマホの台数を参考にするといいだろう。4人家族で全員がスマホ持っているなら2×2よりは4×4または3×4のほうが、1台ごとの通信速度は安定する。

●ビームフォーミングとは

 最近のWi-Fiルータ(アクセスポイント)のパッケージなどに「ビームフォーミング」という言葉がある。802.11n以降の規格で対応する機能だ。簡単にいえば、Wi-Fiルータがつながっているスマホのだいたいの位置を検知して、その方向だけ電波を強くしてくれる機能だ。つまり、より安定した通信が可能になる。

 通常、受信感度をよくしたければ、受信機のアンテナを送信機の方に向けてやればいい。もしくは送信機のアンテナを受信機に向けてやる。それを電気的に自動でやってくれるのがビームフォーミングだ。

 原理はこうだ。Wi-Fiアクセスポイントがテスト信号を送り、スマホからの受信状態のデータを送り返してもらう。このデータでだいたいの方向を探る。その方向への電波を強めるのだが、MIMO方式のようにアンテナが複数あれば、それぞれの電波強度と電波の位相(波のタイミング)を調整することで、部分的に電波の強い(電波密度が高い)ところを生成する。アンテナの向きを直接変えるわけではないので、接続しているデバイスが複数あっても、原理上、密度の分布を変えるだけなので問題ない。

 もちろん壁などの障害物の影響は受けるが、NECがハウススタジオ(実際の住宅)に持ち込んでのテストでは、1階の1800HP4と2階のスマホのスループット比較で、ビームフォーミングを行うと最大58%の速度アップ(234Mbpsが371Mbpsになった)が確認できたという。

 欠点は、受信側がテスト信号に適切なデータを返す必要があるので、スマホもビームフォーミングに対応している必要がある。

●細かい速度差より設置場所が重要

 最後に基本的なポイントをいくつか整理する。まず、カタログやパッケージに記載される伝送速度は、あくあまでその規格で想定できる理論上の最大値であるという認識。1766Mbps、800Mbpsなど、各社微妙に違った数字を表示しているが、数Mbps、数十Mbpsの違いなら誤差の範囲と考えてよい。

 もちろんスペック上速いものを選ぶに越したことはないが、実際のスピードは設置環境に大きく依存する。木造住宅で、なるべく遮るものがないほうが速くなり、安定する道理だ。数Mbpsの差で店頭で悩むならルータの設置場所やスマホの利用場所を考えたほうがいい。

 スペック上の伝送速度ではなく「スループット」を比較する方法もある。スループットとは、転送データ全体の処理能力ではなく、実際に必要とするデータ本体の処理能力を示す指標だ。例えば100Mバイトのデータを送るとき、宛先の情報やどんなデータなのかを示すデータも必要だ。また、ビームフォーミングのようなしくみでは、通信前に情報のやり取りを行う。このようなオーバーヘッドを含めて、実際に送りたいデータ部分が1秒間にどれだけ送れたのかを示すのがスループットだ。参考にはなるが、測定方法や評価方法の詳細がメーカーごとに違うので、規格スピードとの違いでルータの性能を見るために利用するとよい。

 伝送速度は、Wi-Fiルータの性能だけで決まるものではない。接続するスマホが古い機種だったり、契約している自宅回線が遅ければ意味はない。Wi-Fiルータが1.7Mbpsというカタログ値だったとしても、自宅回線が100Mbpsならば、それ以上のスピードは絶対にでない。Wi-Fi機器を選ぶときは、自宅回線と接続するスマホやPCのスペックとのバランスをかんがえるべきだ。
中尾真二

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